見タイ知りタイ！行った気になる歴史と散策クイーンズ ③　エルムハースト – Elmhurst

クィーンズ区にあるエルムハースト（Elmhurst）は、ピューリタンが1652年に設立した街。オランダ人の植民地ニュー・ネーデルラント（New Netherland）に、コネチカット州やマサチューセッツ州からやって来たイギリスのピューリタンが住み始めます。当初、街名はオランダ当局がオランダ名を要求したため、ミドルバーグ（Middleburgh）だったとの事。その後、イギリスがニュー・ネーデルラントを占領した1664年を機に、のどかな田舎のイギリス人コミュニティはニュー・タウン（New Town）の名を経て、ニュータウン（Newtown）となります。そして、1898年にNY市の一部となった際にエルムハーストとなり今に至ります。ああ～ややこしい。しかし、高校を含めちらほらとNewtownの名が付いていたので、合点がいき名残を感じました。

20世紀に入り住宅や商業施設が集中的に開発され、次第に多くの移民が住み始め、近年は世界中の百か国以上からの移民が住む多様性のある街となります。2010年国勢調査によると、人口約88,000人の内訳は、ヒスパニック、ラテン系46.1%、アジア系43.8%と、これらグループが断トツです。そして6.6%白人、1.3%アフリカ系と続き、その他比率は低いですが多くの国から来ています。この街が白人がマイノリティーのメルティング・ポットと言われる所以がこの数値を見て理解しました。
ヒスパニック系の内訳は、11.6%のメキシコを筆頭に、9.8%エクアドル、7.2%コロンビア、3.1%ドミニカの順で続き、その他多くの中南米の国々から。

ジャイナ教は、西インドを中心に広がる、厳格な菜食主義や不殺生で知られる宗教。エルムハーストの寺院は、1976年に米国で一番最初に登録されたジャイナ教寺院。現在は全米に100以上のジャイナ・センターがあるとの事。
1982年に建設された建物は、1,544.5 m²（約450坪）の敷地に下室もある4階建てです。一度に500人も収容できるかなり立派な施設です。また、多くの宝石を含み、大きく見事な水晶石の壇なども備えていて、施設に関しては質素な印象はあまりなかったです。
突然グループで押しかけましたが、温かく迎え入れてくれた事は強く印象に残っています。
Jainの英語の発音はジェインで、無知な私は女性のJaneと勘違いしている事に気づいた時、一人思わず苦笑い。

ジャイナ教センターがあるイサカ通り（Ithaca Street)には、聖バーソロミュー教区ローマカトリック教会（St. Bartholomew Parish Roman Catholic Church）、チャペル、学校もあります。

住宅街の通りから少し入った所にカラフルで目を引くタイの仏教寺院があります。敷地にはのびのびと横になっている仏陀以外にも像が建物の外にいくつかあり見学出来ます。施設内は入り口から覗いただけでしたが、中に居る人達は笑顔で手招きしてくれ、穏やかで温かい空気に満ちていました。
ワットはタイ語で寺院の意味だそうです。

ネパールの少数民族で、山岳地帯で農業と牧畜を中心に生活し、有能な山の案内人、エベレスト登山などのガイドとしても有名な民族、シェルパ族。シェルパ協会は、シェルパ族の社会文化や言語的遺産の保存と促進、シェルパ社会の団結と繁栄が目的だそうです。建物の外も内も使われている色は独特でした。
エルムハーストの北側で隣町のジャクソン・ハイツ側にあります。
Sherpaはシャーパに近い発音です。

エルムハースト病院は545床ある公立病院。さまざまな移民が住む街の病院ゆえ、多言語に対応している事でよく知られています。言語バンク（language bank）なるものが1975年に設立され、50～60人の通訳者が20以上の言語でサービスを提供しているそう。さらに、2005年にニューヨークタイムズ紙が、病院を訪れた約50万人の患者が100以上の言語や方言を話し、おおよそ半数は英語がほとんど話せなかったため通訳が必要だったとと報じたそうです。ほんまか？と若干驚きです。
加えて、この病院は、Covid19パンデミック時、NY州で知れ渡りました。2020年3月の最終週、ニューヨーク州自体が世界的なパンデミックの震源地であった頃、ニューヨーク州のパンデミックの中心地でした。ですので、当時、世界で最も過酷な医療現場の一つだったと言われています。
余談ですが、この病院の敷地は綺麗な三角形です。

ニュータウン高校は、1897年に創立された学校。設計士は街がオランダの植民地として始まった事を示したく、フランドル・ルネッサンス・リバイバル様式としたとの事。公立とは思えない程見事な建物はNY市ランドマークとなっています。
よく知られた卒業生に、エステーローダー化粧品会社の創始者の一人、エステー・ローダーや、ロックバンドKISSのジーン・シモンズがいます。
この学校ではありませんが、元首相岸田氏がエルムハーストにあるクレメント・シー・モア―小学校に、三年生まで約2年間通っていたそうです。

マンハッタン・ミッドタウンからクイーンズ区を横切るニューヨーク州道25号線の一部がQueens Boulevard としてエルムハーストを横切っています。
場所によっては横断歩道の長さが最大91メートルあり、NY市内で最も危険な大通りの一つ。「死の大通り（ Boulevard of Death）」と恐ろしいニックネームが付く程です。
理由の一つに、まっすぐな広い車線を、制限速度を大幅に超えて高速道路のように運転する事。もう一つは、交差点間の距離が長いため、多くの人が横断歩道のない場所で大通りを渡っている事が原因のようです。交通量も多く、まさしく命がけのジェイウォーク。
「大丈夫や！行ける！」と過信せず無理せず、気を付けて渡ってください。

エルムハーストには、2つの小さな民族居住地、リトル・タイランドとリトル・インドネシアがあります。
リトル・タイランドは、NY市に公式に認定されています。ウッドサイドアベニュー沿いの76～7９丁目辺りにあり、タイ仏教寺院から北に数ブロック離れた所。この辺りにはAyada Thai、Zaab Zaab、Hug EsanやSaranrom Thaiなど、数々のタイレストランが並びます。Ayadaがお気に入りで何度か訪れる方も。