見タイ知りタイ!行った気になる歴史と散策クイーンズ ④ フラッシング – Flushing

ニューヨーク市観光

春節のパレード  Photo by Philip G.

NY市クイーンズ区フラッシングは、NY市内で最も大きい中華街があり、20世紀後半から中国系のみならず韓国系やインド系の人達などアジア系住民が2/3にもなる街です。かつてオランダ領地であり地名はオランダの街フリッシンゲン(Vlissingen)の英語読みだそうです。
ロングアイランド鉄道(LIRR)とNY市地下鉄が乗り入れ、地下鉄の出口を出ると、一瞬どこにいるのか戸惑う位の別世界。乱立する漢字の看板と飛び交う英語でない言語、溢れるエネルギーと力強さに圧倒されそうになります。

春節のパレード  Photo by Philip G.

目抜き通りのメイン・ストリートとルーズベルト・アベニューの交差点近くは、タイムズ・スクエアと34丁目付近のヘラルド・スクエアの次にNY市で3番目ににぎかな場所なのが納得できます。
また、フラッシングはアメリカでの宗教の自由の誕生の地、そして奴隷解放活動のアンダーグラウンド・レイルロードとも関係があった地。21もの歴史的建築物があり、豊かで深い歴史を紹介できればと思います。

1.セントジョージ聖公会教会(St. George’s Episcopal Church)

セントジョージ聖公会教会

1854年に建てられたセントジョージ聖公会教会は、アジア系の店舗が並ぶメイン・ストリートで、異文化と融合するように、そしてどーんと存在感を放って建っています。メイン・ストリートに行かれると、あ!あの教会ね、とすぐ気づかれると思います。
国家歴史登録財そしてNY市ランドマークに登録されています。

2.フラッシング・タウンホール(Flushing Town Hall )

フラッシング・タウンホール

フラッシング・タウンホールは、1862年に建設された初期ロマネスク様式のどっしりと落ち着きのある見事な建物。オープン当初は、一階は市庁舎で、二階は市民イベントに利用されていたそうです。現在は、コンサートなどが催される多文化アート・センターとなっています。訪問時は春節だったので、赤い提灯が映えて綺麗でした。
大通りのノーザンブルーバード沿い(Northern Voulberd)にあり、国家歴史登録財そしてNY市ランドマークです。

3.クエーカー集会所(Quaker Meeting House

イングランドで設立されたキリスト教プロテスタント一派のクエーカー教。その信者達は、新天地ニュー・イングランドで抑圧され、クイーンズに移り住みました。
クエーカー信者のフラッシングの集会所は、大通りのノーザンブルーバード(Northern Boulevard)沿い、フラッシング・タウンホールの斜向かいにあります。1694年と三百年以上前に建てられた板張りのこの集会所は 、修復を重ねNY市で最も古く現存する礼拝所です。 アメリカ独立戦争中にイギリス軍に占拠された時もあったそうです。一見民家のようで地味な古い建物は、解説する看板がなかったら見過ごしてしまいそう。でも、その看板には落書きが多く、あまり人々の関心は向いていない印象を受け、残念な気がしました。でもここも国定歴史建造物 でNY市ランドマークです。

クエーカー集会所と看板
クエーカー集会所

4.ジョン・ボウンの家(John Bowne’s House )

ボウンの家  Photo by Jon

クエーカー教徒の指導者であったジョン・ボウン(John Bowne)家は、1661年頃ボウン・ストリート(Bowne Street)に建てられたクィーンズで一番古い建物です。ボウンは、当時のニュー・ネザーランド総督ピーター・スタイヴァサント(Peter Stuyvesant)の意に反し、1662年に自宅でクエーカー教徒集会を開き、逮捕されました。クエーカー集会所が出来る前です。このボウン逮捕がのちに、植民地での宗教的寛容(Religious Tolerance)と自由の確立へと繋がり、米国での宗教の自由を得る事に大きく貢献したそうです。
この淡いピンク色の外壁の家は、1947年に博物館となり一般公開されツアーもあります。
https://www.bownehouse.org/ 
国定歴史建造物 でNY市ランドマークです。 

また、ジョン・ボウンの子孫は南北戦争前、奴隷制度廃止運動に携り、奴隷の人々の亡命を手伝う秘密組織ある「アンダーグラウンド・レイルロード」を通して、多くの奴隷たちの自由のために尽力したそうです。移動は夜だったので、昼間にかくまう教会があったそうです。北へ向かう奴隷の人達の昼間の隠れ場所として協力した教会が、郊外にもそこここにあると聞いた事があります。
さらに、ボウンの子孫であるウォルター・ボウンは、1829 ~1833年の間59代目としてNY市長を務め、かつてのボウン家の夏の別荘は、隣町にあるボウン公園(Bowne Park)になっています。ボウン家はNY市やフラッシングと深い関係があります。

ジョージ・フォックスの看板
Photo by Maria
ジョージ・フォックスの記念碑

加えて、ジョン・ボウンの家近くに、イギリス人クエーカー教の始祖、ジョージ・フォックス(George Fox)が説教をした場所の記念碑があります。なんてことない石の碑がぽつんとありますが、当時、クエーカー教徒にとってそれはそれは凄い一大イベントだったのかもしれません。

5.ルイス・ハワード・ラティマー(Lewis H. Latimer)

ルイス H.ラティマー

ラティマーは、1848年、マサチューセッツで逃亡奴隷の息子として生まれました。差別や経済的な逆境にめげず独学で製図者となり、また発明家でもありました。アレキサンダー・グラハム・ベルの電話の特許申請時の製図を担い、トーマス・エディソンの製図主任そして特許専門家でもあったそうです。自身も電球に使われたカーボン・フィラメントの特許を持ち、初期段階のエアコンを設計したりと、テクノロジー分野の先駆者と言われています。家は博物館になっており、偉大な功績を残したラティマーの生涯を学べます。https://www.lewislatimerhouse.org/

ラティマー博物館

6.枝垂れブナ公園(Weeping Beech Park)

枝垂れブナと記念碑  暖かい時期には美しいかと

枝垂れブナ公園はマーガレット・イザベル・カーマン緑地(Margaret I. Carman Green)を通った先にあり、かつて、1737年創業の米国初の商業用苗床パーソンズ苗床(Parsons Nursery)があった場所です。この苗床の経営者、サミュエル・ボウン・パーソンズがベルギーから米国に持ち込み、1847年から1998年までの151年間生きました。約18メートルの高さで幹の太さは約4メートルの大きさとなり、生きた国家歴史登録財になった貴重なブナの木でした。米国にある枝垂れブナはこの木の子孫だそうで、今も立派なブナが数本ありました。

キングスランド・ ホームステッド  Photo by Jon

パーソンズは、枝垂れブナ以外に、もみじ(Japanese Maple)、つつじ、シャクナゲをはじめ、数百の植物を米国に紹介した造園家です。セントラル・パークやプロスペクト・パークを設計したフレデリック・ロー・オルムステッド(Frederick Law Olmsted)とカルバート・ヴォークス(Calvert Vaux)と深く関係があった人のようです。
同じ敷地に1785年頃建てられたキングスランド・ ホームステッド(Kingsland Homestead)があります。博物館になっており、クイーンズ歴史協会のオフィスにもなっています。
https://queenshistoricalsociety.org/kingsland-homestead/
国定歴史建造物 でNY市ランドマークです。

7.フラッシング高校(Flushing High School) 

フラッシング高校

フラッシング高校は、NY市で一番古い公立高校で、校舎は、学問の殿堂であるオックスフォードやケンブリッジを連想するように設計されたそうです。なるほど、一見するとここは大学?と勘違いする程立派です。建物上部にあるガーゴイル(Gargoyle)も印象的で、そちらにばかり目が行ってしまいました。国定歴史建造物 でNY市ランドマークです。

怖いようでなんとなく愛嬌のあるガーゴイル

8.フラッシング・フリーダム・マイルFlushing Freedom Mile

フリーダム・マイル 中心街から近くまとまっています

フラッシング・フリーダム・マイル(Flushing Freedom mile)はフラッシング中心地から近く歴史的建造物を巡るコースでグリーンとオレンジの2種類あります。上記の施設は全て、フリーダム・マイルのコースに入っています。何も知らないで回るとただの小ぶりの古い家巡りとなりそうですが、今回の紹介記事を読んで、なるほど!と思って頂けたら嬉しいです。
コースは小さく、恐らく1マイル内にまとまっているので、少し長めの散歩に良いかもしれません。フリーダム・マイルのユーチューブ 
https://www.youtube.com/watch?v=b8CRpFZI5to がありましたので、こちらも参考にしてください。

9.ガネーシャ寺院(Ganesha Temple)

ガネーシャ寺院 これは正面入口で全体はもっと大きい

ガネーシャ寺院の正式名はSri Maha Vallabha Ganapati Devasthanam templeですが、この寺院の主神ガネーシャにちなみガネーシャ寺院として知られています。インド移民が建てた米国内で2番目に古いヒンズー教寺院で、非営利団体の北米ヒンズー寺院協会が運営しています。
靴を脱いで入る寺院は、混み合うほどではありませんでしたが、個人や家族とヒンズー教の人々が止めどなく礼拝に訪れており、寺院内には神様が数多く祭られておりとても厳かでした。

写真撮影は禁止されているので、残念ながら写真はありません。
余談ですが、靴脱ぎ場には下駄箱があるにもかかわらず利用する人は少なく、証拠写真を撮れば良かったと後悔する位、靴がとっ散らかっていました。脱いで投げているのか。。。。椅子がないの?と言う人やふう~はあ~言いながら紐をほどいて脱いでいたり。早く脱いで~や~!と密かに思っていました。

装飾が見事な廊下
寺院の横にある食堂の入り口

また寺院横から入り、地下にある寺院のカフェテリア「Temple Canteen」では、ベジタリアン南インド料理が、お手頃価格で食べられます。何を注文していいのか若干戸惑いますが、列がゆっくり進むのでその間に決められます。クレープのようなドーサ(dosa)や揚げてぷっと膨れたプーリ(poori)、一番人気のマンゴー・ラッシーを注文する人が多い印象でした。カウンターで注文後、番号が呼ばれて取りに行き、わさわさしつつも元気で明るい雰囲気は学生食堂のようで、個人的にここが一番楽しかったです。
フラッシング中心街から少し離れていて、残念ながらバス利用か徒歩20分程かかります。

薄いクレープのようなドーサ
揚げてあり空洞、ほほをㇷ゚―っと膨らませたようなプーリ

11.他の見どころ

フラッシング・シナゴーグ

他にも多様性を反映するように多くの宗教施設があります。
例えば、シーク教センター、日蓮正宗寺院やロングアイランド線フラッシング駅近くにある立派なシナゴーグ(Free Synagogue of Flushing )など数々。
また、宗教関係以外であれば、ドイツ語で森の中の家と言う意味のワルトハイム( Waldheim)と言われる裕福層向けの住宅街だったエリアやクイーンズ区で一番古い病院もあります。見どころ盛りだくさんです。

12.まとめ

一昔前にはなかったおしゃれなベーカリー
バナナもその隣のマンゴーもケーキです

フラッシングは歴史がある街とは聞いた事があったのですが、宗教の自由の誕生地、奴隷の自由に関わった街とは知りませんでした。中心地に行く度にびっしり並ぶアジア系スーパーマーケット、レストラン、パン屋やカフェで、買う、食べる事しか意識はなかったですし。
古きを残しつつも、中華街の中心地は開発で少しですが変わりつつありました。知っているようで全く知らなかったフラッシングの一面に驚き、文化の奥深さ、個性と魅力を改めて感じました。機会があれば、是非足を運んでみてください。

行き方
・NY市地下鉄7番線 終点のFlushing-Main Street駅が便利です

謝 意
I’m so grateful to Hank O. for showing me around various places and sharing their knowledge, and Maria, Philip G and Jon for allowing me to use their photos.

参 照
・Onofri, Adrienne. Walking Queens. Wilderness Press, 2014.
Old Quaker Meeting House (Queens) – Wikipedia

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