
世界で最も民族的に多様なエリアの一つであるNY市クイーンズ区のほぼ中央に、ジャマイカは位置します。
現在は、アフリカ系、中南米系の人々が多く暮らす街ですが、かつて19世紀から20世紀初期は、主にアイルランド系の白人が住む街でした。しかし、1950~1980年にかけ白人の流出(White Flight)が始まり、代わって中流アフリカ系、そして次第にカリブ海/西インド諸島系、ヒスパニック系の人々が住み始めました。2010年の国勢調査では、 38.7% ヒスパニック・ラテン系、22.2% アフリカ系、24.3% アジア系、そして3.6%が白人となっています。近年、南アジア、特にバングラディシュからの人口が急激に増加し、リトル・サウスアジアとも呼ばれている地区もあるそうです。
ジャマイカは、ロングアイランドやJFK空港へ向かう鉄道の中心駅がある街として知られていますが、商業地区もあり、歴史的建造物もあるので、数か所ですがご紹介します。
1.街の名の由来とビーバー

この街の名「ジャマイカ」はなぜジャマイカ?と私のように思った人もいらっしゃるかと。謎を調べました。
かつて、この地域に住んでいたネイティブアメリカンのレナペ族が話していた言語で「ビーバー」を意味する「ヤメカ(yamecah)」から。当時、貿易を行っていたオランダ人のオランダ語は「y」を「j」と綴るので「Jamecah」と。そして英語化されていったそうです。街の名は、カリブ海の国ジャマイカとは関係はないのですが、ジャマイカを含む西インド諸島の人々も多く住むのでジャマイカ料理はクィーンズ地区ジャマイカの地元料理のようです。ああ、ややこしい。

余談ですが、NY市の旗に、「オランダ西インド会社」のシンボルとしてビーバーが描かれています。ビーバーに見えにくいですが。17世紀初期、ネイティブ・アメリカンとオランダ人との貿易の中心であったのがビーバーの毛皮。当時、最先端のファッション、そして社会的地位や身分の象徴であり、撥水もよいため帽子や襟元用としてヨーロッパでの需要が高かったようです。NY州北部にあった主要な交易拠点、現在のNY州都オーバニー(Albany)からハドソン川を南下しマンハッタンの港へ。そして、オランダへ輸出されました。NY州のオフィシャルの動物でもあるそうです。
NY市旗には、米国の象徴である白頭ワシ(Bald Eagle)、元々の住民であるネイティブ・アメリカンと植民地の象徴としての船乗り、そして風車や小麦粉樽などが描かれています。
1.ジャマイカ駅(Jamaica Stations)

ジャマイカは何と言っても、鉄道の中心駅としてご存じの方も多いかと思います。ロングアイランド鉄道(LIRR)は、ポート・ワシントン線以外は全ての線が停車し、隣接するビルに本社があります。平日20万人もの人が利用し、米国内で、マンハッタンにあるペン駅、グランド・セントラル・ターミナル駅に次いで三番目に混み合う駅です。

さらに、地下鉄E、J、Z線、そしてJFK空港のターミナルへ向かう無人運転のエアー・トレイン(Air Train)の駅もあり、駅構内から出る必要もなく、大変便利です。エアー・トレイン利用の際、ジャマイカ駅はマンハッタンのペン駅やグランド・セントラル・ターミナル駅とJFK空港を繋いでくれるとても便利な駅で、駅構内や付近にはスーツケースを持った乗客がたくさんいます。
駅の外はバス路線もたくさんあり、道は混み合い、ごちゃごちゃ感はありました。




1.ジャマイカ・アベニュー(Jamaican Avenue)とその周辺

ジャマイカ・アベニューは、街を東西に走る長い通りで、その一部はジャマイカの商業の中心で、米国国家歴史登録財でNY市ランドマークの鋳鉄時計(Cast Iron Clock )がある辺りです。かつて、時計を見上げて時間を確認する時代に、サイドウォークにある時計は、ビジネス名を入れ宣伝用としても活用されていたそうです。店舗が集まり賑わってはいますが、生活必需品店とチェーン店が多い印象ではありました。
加えて、家庭裁判所、社会保障事務所や芸術施設のJamaica Performing Arts Center (JPAC)とJamaica Center for Arts and Learning (JCAL)があります。



ジャマイカ・アベニューから少し離れますが、他にも米国国家歴史登録財、NY市ランドマークのクイーンズ区最高裁判所(Supreme Court Queens County)や米国国家歴史登録財の郵便局など、行政機関の建物も少なくありません。さらに、NY州で2番目に古いグレース聖公会(Grace Episcopal Church)を始め、多数の教会もあります。
商店街から少し離れた場所に、魔女の帽子のビル(Witch Hats Building)と言われるなんとなく遊び心を感じる建物もあります。シェークスピアのマクベスに出てくる3人の魔女のようかな。



1.キング邸博物館(King Manor Museum)

キング邸博物館は、アメリカ合衆国の政治家、外交官、建国の父の一人であり奴隷制度廃止論者であったルーファス・キング(Rufus King)の元邸宅です。このL字で2階建ての建物は、11.5エーカーあるルーファス・キング公園( Rufus King Park)敷地内にあります。公園はそこまで大きくはありませんが、個人邸の敷地であればかなり広いかと思います。

約1730年頃建設後、1755年と1800年代に増築されたフェデラル・ジョージアンとギリシャ様式の建物は、売却され、現在はニューヨーク市公園局が管理しする博物館となっています。
2000年代に入って以降、何度かに分けてですが、約5百万ドル以上の改修費がかけられています。外から見ただけですが、建物の状態も良く、とてもよく管理されている印象でした。米国国家歴史登録財、米国国定歴史建造物、ニューヨーク市ランドマークです。

博物館は、火曜日から土曜日まで 12pmから30分おきに 4:00pm までツアーを提供しています。予約は必須ではありませんが、推奨との事。興味深いのは、土曜日にベンガル語のツアーがあるそうです。バングラディシュ系の人々が多いからでしょうか。 King Manor Museum
1.バレンシア劇場(Valencia Theater)

アメリカの映画館チェーン、ロウズ社(Loews Incorporated 、現在はAMC Theatres)は 、1920 年代後半、ニューヨーク市と近郊に5 つの壮大なロウズ・ワンダー劇場 (Loew’s Wonder’ Theatre’s) を建設しました。そして、それぞれの劇場に ロバート・モートン(Robert Morton)社のワンダー ・モートン劇場パイプオルガンを設置しましたそうでう。恐らくですが、かなり立派なオルガンだったかと思われます。


この5つのワンダー劇場で最初にオープンしたのが、バレンシア劇場。オーケストラピットやバルコニーもある3,554席の大劇場。ここでは、1935年初期までショーが上演され、その後1960年代までクィーンズ区で最も成功した映画館となりました。ロウズ社から寄付され、1977年に教会(the Tabernacle of Prayer for All People church)となり現在に至ります。国家歴史登録財です。

内装は、スペイン植民地時代とプレコロンブス時代の様式らしいですが、モロッコ、ギリシャ、アジアの様式も入っているらしいとも。独特の色彩と様式は豪華で、様々な文化が融合するアメリカらしいような装飾でした。元は劇場だったからか、内装全体が、素晴らしい出来の立派な芝居の舞台装置のような、はたまたテーマパークのようにも個人的に思いました。

日常を離れて楽しむ芝居やショーにはピッタリだけど、暗くなると装飾が見えない映画館にはもったいない、教会に至っては華やか過ぎかな、と個人的な印象を持ちました。ミサが行われる時は一般の人も入れるようです。
かつてここにあったパイプオルガンは、カリフォルニア州に渡り、今は日本にあるとの事です。


1.聖モニカ教会(St. Monica’s Church)

ジャマイカの南部にある聖モニカ教会は、1856年に建築された赤レンガ造りのロマネスク様式ローマカトリック教区教会でした。しかし、1970年代頃、破壊行為や放置により壊され、現在は建物の正面部分であるファサード(facade)のみとなっています。正面部分だけしか残っていないのに、教会と呼べるのか、とも思いますが、全てを取り壊さず残こしているのは、素晴らしいかと。最初、「何、この張りぼて感」と思った自分が恥ずかしかったです。

現在は、ニューヨーク市立大学ヨーク校(York College)の託児所となっています。
2025年のNY市市長選に立候補している元NY州知事アンドリュー・クオモの父、マリオ・クオモが、この教会で1940年代司祭がミサを行う際に祭壇の近くで手助けをする役割の少年(an altar boy)だったそうです。
1.ジャマイカ ・ムスリム ・センター(Jamaica Muslim Center)

ジャマイカ ・ムスリム ・センターは、アル・マムール・モスク(Masjid Al-Mamoor)とも言われ、モスク、学校、宗教的な集会や食事の場がある大きな多目的イスラム施設です。1976年にバングラディシュ系アメリカ人によって始められ、バングラディシュ系の人々が多く住む地区にあります。ある資料によると、人数に幅があり過ぎな気もしますが、1,500-6,500人のイスラム教徒がジャマイカに居住しているとの事。

訪問時は、ラマダン中の夕方でしたので、足早にモスクに向かう教徒、主に男性を多く見かけました。また、地下鉄169丁目駅近くにあるほとんどのレストランは、日の出から日没までの間、食べない、水も飲まない断食を行うラマダン期間中、日没後、最初にとる食事はイフタールと呼ばれ、そのための店内飲食より、料理がお持ち帰り用としてあちこちで販売されていました。小腹が空いていたので、何か食べたかったのですが、店内飲食は難しかったです。



揚げ物が多い印象
1.まとめ
ジャマイカは、ロングアイランドやJFK空港へ行く際に利用する駅としてご存じの方も多いかと思いますが、なかなか行く機会のない駅以外がどんなところか少しでも共有できればと思い書きました。
街には政府機関の建物、アート・センターやギャラリー、そして点在する歴史的建造物や教会も数多くあり、歴史ある街と感じました。ただ、店舗が集まり人出の多いジャマイカ・アベニュー沿いにはゴミが多く、ゆっくり買い物やお茶を楽しめる雰囲気がないのは残念でした。また、外者が行きにくい感じがあり、留まっている印象でした。
同じジャマイカでも、NY市地下鉄EとF線169丁目駅近辺のアジア系の人々が多く暮らすエリアは、ジャマイカ・アベニュー沿いとは雰囲気は違い、若干親しみを感じました。
率直に言って、治安がそこまで良いとは言えない街ですので、街をご存じでなければ、昼間でも一人歩きでなく誰かと一緒に、そして夜は必要ない限り行く場所ではない印象でした。


行き方
NY市地下鉄F線Jamaica Center-Parsons/Archer駅、またはF線のSutphon Blvd. かParsons Blvd.駅が便利です

謝 意
I’m so grateful to David L. for showing me around various places and sharing his knowledge, and also, to Ruth S. and John K. for allowing me to use Their photos.

参 照
・Onofri, Adrienne. Walking Queens. Wilderness Press, 2014.
・Jamaica, Queens – Wikipedia
・Loew’s Wonder Theatres – Wikipedia
・Valencia Theatre – Wikipedia
