ブルックリンにあるグリーンポイントの商業地や住宅街から、少し離れると別世界が広がります。
イースト・リバーの支流で、ブルックリンとクイーンズとの間を走る約6キロの水路、ニュータウン・クリーク(Newtown Creek)です。そこは、過去の産業活動や華やかなマンハッタンの陰の部分を一手に担い、虐げられながらもNYCの発展を支え続けてきたように思える場所です。
1.19世紀の頃
このクリーク沿いは、19世紀後期から20世紀中期に衰退するまでの間、50以上の製油所、造船所、ガラス工場などがあうる工業地帯でした。産業施設からの黒煙排出量は非常に多く、ブラック・アートと呼ばれた位だったそうです。
製油所の多くは、ロッカフェラー家のスタンダード・オイル会社関連。1911年、独占を防ぐため、スタンダード・オイル会社は連邦最高裁からの解体命令で34の新会社分割されました。しかし、その後も分割された新会社モービル、エクソンやその他の石油会社も1966年までこの石油精製設備を使用し、のちには貯蔵施設や配送施設として1993年まで使われていました。
さらに、1950年、当時米国で最もひどい石油流出の一つと言われるGreenpoint Oil spillが起こりました。数十年に渡って、原油処理施設から多量の石油や石油製品が土地に漏れていたそうです。初めて発見されたのが1978年9月で。米国沿岸警備隊の定期パトロール時にヘリコプターから石油がクリークに流れ込んでいたのに気づいたそうです。
加えて、長年、マンハッタンの産業汚水、家庭からの下水などありとあらゆる物が投棄され、汚泥蓄積が4.6メーター、一部には7.6メーターにもなったそうです。このクリークはイースト・リバーの支流ですが、潮の流れの影響が少なく、水の動きがないため、留まってしまう事も一因となり、悪臭を放ち、全米でもっとも汚染されている地区の一つとなってしまいました。
ブルックリンにあるゴワナス運河(Gowanus Canal)同様、連邦政府の汚染土壌浄化のための基金であるスーパーファンド(Superfund)のリストに2010年に加わり、浄化が行われ始めました。
2.浄水場(Wastewater Treatment Plant)
そのクリーク沿いにNYCで一番大きい下水処理場のNewtown Creek Wastewater Treatment Plantがあります。
デザイン賞を取ったダイジェスター(Digesters)と呼ばれる43メートルの高さの、有機廃棄物の細菌分解に使われる装置が8つあり壮観です。卵に似ているので、ダイジェスター・エッグとも言われていますが、なぜか私の目には銀色のイチジクにしか写りません。昼間は金属製ゆえ太陽に照らされキラキラ輝き、夜は青いライトに照らされ地域の独特なランドマークになっているそうです。
さらにその周りには、人工的に無理して作った印象のある散歩道のNewtown Creek Nature Walk、そして映画スタジオの屋上に作られたKingsland Wildflowers Green Roof があり、NYCのローカルの鳥や野生植物のオアシスとなっています。ここからマンハッタンを眺められます。どちらも、クリーク沿いの下水処理場、リサイクル施設そして石油貯蔵場所近くにあり、散歩道を歩いている間、強くはないですが、時折悪臭が漂っていました。
3.むすび
ニュータウン・クリークは、地図で見るとブルックリンとクイーンズの間にあるただのクリークですが、訪れるまで、人々の欲や都合に合わせて悪用され、長きにわたり放置され続けた暗い過去があったと事を知り衝撃を受けました。スーパーファンドにより浄化活動が行われ、近辺には遊歩道や小さいながらも植物園を作り、下水処理場は稼働され、生まれ変わりつつあるような印象でした。
クリーク近辺は、遠くから見る方がお勧めのような気がしますが、グリーンポイントの中心からほど近いので、ダイジェスターが卵かイチジクかどちらに似ているか確認に立ち寄られるのも以外と楽しいかもしれません。
グリーンポイントの街の中では、安心してください、臭いませんよ。
行き方
グリーンポイントへは、NYC地下鉄G線のGreenpoint駅かNassau駅が便利です。
謝 意
I’m so grateful to David L. and Kevin K. for showing me around various places, sharing his knowledge and spending time with me.
参 照
・Newtown Creek – Wikipedia
・www.boweryboyshistory.com/2016/02/greenpoint-brooklyn