見タイ知りタイ! 行った気になる歴史と散策_ブロンクス ③ ハイ・ブリッジ – High Bridge

ニューヨーク市観光

ハイ・ブリッジ地区はブロンクス南西部に位置し、地区の南東にヤンキースタジアムが隣接します。
ここは19世紀中期、ハーレム川を臨む富裕層向けの郊外の邸宅地として開発されました。地区を南北に走るアベニューには、今でも邸宅を所有していた家族の名、例えばOgden、MerriamやAndersonなどが残っています。その後、都市開発のために分割されたそうですが、オグデン・アベニュー近辺には今でも邸宅が残っているとの事。
また、19世紀後半から20世紀前半にかけて、NY市のインフラ整備や建設業に従事し、地域社会の形成に大きく貢献したアイルランド系の人々が多数移り住み、当時ハイ・ブリッジは「アイリッシュ・ブロンクス」と呼ばれる程だったそうです。

1960年代後半には、主な住民はアイルランド系、イタリア系、東ヨーロッパのユダヤ系となりますが、次第にアイルランド系が郊外へ流出。一方で、ドミニカ共和国やプエルトリコ、アフリカ系の人々の流入が始まります。
2010年の国勢調査によると、ヒスパニック系64.3%、アフリカ系32.9%、白人は1.2%、アジア系0.5%。2018年時点では、地区の約32%の家族は連邦の定める貧困ライン以下、8人に1人が失業者と推定されています。

1.ハイ・ブリッジ(High Bridge

ハイ・ブリッジをブロンクス側から

地区ではなく橋のハイ・ブリッジは、NY市で現存する最も古い橋で、ブロンクスとマンハッタンを繋ぎます。このハーレム川にかかる43メートルの高さの橋のオリジナル名は「水道橋(Aqueduct Bridge)」。名が示すように、かつては、NY市への給水システムであったクロトン導水路の一部として水を運ぶ橋でした。ローマ水道橋に倣った石造のアーチ橋は9年をかけ1848年に完成、「マンハッタンの偉業(Manhattan’s Wonder)」とも称されたそうです。1917年に役割を終え、1927年には、大きな船の航路確保のため、アーチの一部が鉄製に置き換えられました。1949年、水道システムから完全に撤去となりました。

ハイ・ブリッジをブロンクス側から
ハイ・ブリッジ
ブロンクス側から見た橋の上の歩道

橋の下を流れるハーレム川に沿って交通量の多い高速道や鉄道線路が走りますが、しっかりとフェンスのついたこの高い場所では、動きは見えますが騒音は聞こえません。まるで無声映画のよう。マンハッタンのスカイラインが遠くに望め、季節が良い時期であれば、そよぐ風の気持ちよさは格別です。のんびりと歩ける歩道となっていますが、自転車がかなりのスピードで走りますのでご注意ください。
米国国家歴史登録財、NY州歴史登録財そしてNY市ランドマークの美しい橋です。

橋からマンハッタンを臨む
橋から北を向いて

1.三つの橋(Three Bridges)

三つの橋とは、知る人ぞ知るスポット。ブロンクスとマンハッタンを繋ぎ北からワシントン橋、アレキサンダー・ハミルトン橋、そしてハイ・ブリッジが並びます。ハイブリッジ地区と隣のモリス・ハイツ地区にあります。
ワシントン橋は、NJ州とNY州を繋ぐ大橋のジョージ・ワシントン橋と名は近いですが、それとは違い小ぶりです。ワシントン橋のふもとは、現在、細長いブリッジ公園として綺麗に整備されています。しかし、かつては不法投棄や犬の保護施設などがあり未開発の場所だったそう。アクセスも若干悪く、ハーレム川と線路にはさまれた場所で、多くの人が訪れている印象はありませんでした。ただ、メトロノース鉄道モリス・ハイツ駅付近に建つアパート横から公園の北端へのアクセスが良く、そこから三つの橋が綺麗に見えます。

ワシントン橋から線路や道路上にかかる3つの橋
ワシントン橋からハーレム川にかかる3つの橋

1.クロトン導水路(Croton Aqueduct )

クロトン導水路(Croton Aqueduct)は、旧クロトン導水路(Old Croton Aqueduct))と新クロトン導水路(New Croton Aqueduct)があり、水源は、NY市の北に位置するのウエストチェスター郡北部にあるクロトン貯水池です。
19世紀初頭、NY市では、飲料水の汚染によるコレラ蔓延、木造建築の密集による火災の勃発、そして人口の急増(40年間で約5倍)の深刻な問題がありました。1832年のコレラ大流行、1835年には大火事が起こっています。これらの問題を解決するため、遠方からですが清潔な水を安定して供給するため建設されました。それによって、疫病の被害が大幅に減少、火災対応能力が改善され、NY市は近代化へと大きく発展する一歩となったとの事です。

ニュー・クロトン貯水池、池と言うより湖
ニュー・クロトン・ダム
「いざNY市へ出陣!!!」と言っているような轟音と共に貯水池から流れ出る水

旧クロトン導水路
1842年に完成で、全長約41マイル(約66キロメートル)。自然の傾斜を利用して地下を流れてきた水の最終地点は、現在のブライアント公園。その貯水池は1900年に廃止。そしてNY市立図書館本館が建設され1911年の開館となります。ブライアント公園がかつてレザヴォア・スクエア(Reservoir Square)と呼ばれていた事にも納得です。オールド導水路は1955年に役目を終了とされています。
この旧クロトン導水路跡はアクアダクト・トレイルとして整備され、長さ約26.5マイル(約43キロメートル)あり、ハイキングに人気です。ぽつぽつと古びたアクセスするためか通風口のようなものがあり、ハドソン川の景観を楽しめる箇所もあります。

トレイルにある通気口のようなもの
マンハッタン42丁目のブライアント公園
ブライアント公園と奥にNY市図書館本館

・新クロトン導水路(New Croton Aqueduct)
旧導水路だけでは人口増加に対応できなくなったため、新たに建設され1890年完成。全長約33マイル(約53キロメートル)。
現在は補助的に使用されており、ブロンクスのジェローム・パーク貯水池で濾過プラントで処理され、NY市へ。デラウエアとキャッツキル水路を合わせた3つの水路がNY市に充分な水を供給をしています。

ジェローム・パーク貯水池
ジェローム・パーク貯水池

1.パーク・プラザ・アパート(Park Plaza Apartments)

パーク・プラザ・アパート
パーク・プラザ・アパート

パーク・プラザ・アパートは、ブロンクスで最初そして最も有名なアールデコ様式の一つで、米国国家歴史登録財でNY市ランドマークになっており、主に中産階級向け高級アパートです。
パーク・プラザ・アパートの成功とデザインに影響を受け建設された同じくアールデコ様式のヌーナン・プラザ・アパート(Noonan Plaza Apartments) も近くにあります。

アパートの外装
ヌーナン・プラザ・アパート
ヌーナン・プラザ・アパート

 3.ジョーカー階段(Joker Stairs)

シェークスピアアベニューに近くは観光客が来るからか綺麗
アンダーソン・アベニュー側から

ジョーカー階段は167丁目のアンダーソン・アベニューとシェークスピア・アベニュー間の高低差をつなぐだいたい131段(数える人によって違うそう)ある公共階段です。名はいろいろあるようですが、元の名はグアソン階段(Guason Stairs)。また、通り名からシェークスピア階段とも。2019年の映画「ジョーカー」で、この階段は一躍有名になり、ジョーカー階段とも呼ばれ、定着している感じがします。YouTubeでThe Joker – Stairs Dance で検索されると階段でジョーカーがダンスしているシーンが出てきます。

ジョーカーズ階段はこの2つのビルの間に。
シェークスピアアベニュー側から
ジョーカーズ階段から2~3ブロック南にあるこれまた長い階段

急で幅の狭い階段で踊るシーンを見ると、宝塚劇団の団員達がフィナーレで、足元を見ず大階段を踊りながら下りるシーンを思い出します。
途中に踊り場はありますが、長く、また傾斜が強いので、息切れしそう、雨や雪の日に滑りそう、落ちると大変、お年寄りには無理かも、といろいろ思ってしまいました。
映画公開後、観光に来る人が多かったそうですが、私が訪れた時は一部にゴミも多く、足場もあったので、映画のように開放的ではない印象でした。

1.ヒップホップ発祥の地

1520 Sedgwick Avenue にあるアパート
アパート内が辛うじて見えます

ハイブリッジではありませんが、隣街のモリス・ハイツ地区の1520 Sedgwick Avenue にあるアパートはヒップ・ホップ発祥の地とされています。1970年代にアフリカ系コミュニティーのブロックパーティーから生まれたそうです。
クライヴ・キャンベル、またの名はDJクール・ハークが、コミュニティルームでパーティーを主催した事からと言われています。

1520 Sedgwick Avenue 

ヒップホップ発祥地と言われるアパートは、至って普通のアパートで、「発祥の地」と記されたものは見当たりませんでした。ただ、外に小さいレコード盤と建物内にもそれらしき壁画がありましたが、網がかけられ外からは見えなくなっていました。ただ、覗き見したい人が多いのか、網に小さな穴はありました。信じてください。私は開けていません、開いていました。

1.ウッディクレスト児童養護施設(Woodycrest Children’s Home)

ウッディクレスト児童養護施設

ウッディクレスト児童養護施設は、貧困に苦しむ女性や子どもたちを支援する施設として、1902年に建設され、アメリカ女性保護協会(American Female Guardian Society)によって運営さていました。ハーレム川を見下ろす高台に位置し、カーネギーホールと同じ建築家による見事なボザール様式の建物は、NY市のランドマークです。現在は「ウッディクレスト人間開発センター」として、地域社会に貢献しているようです。

1.人々の日常

写真だけですが、散策中に見かけた街に暮らす人々や様子を感じて頂ければと思います。

お母さんの腰に上手に座る赤ちゃん
スーパーの入り口で大音量で歌い踊る男性と
一緒にリズムに乗る客であろう緑の服の人
一人、通りで芋をうっている人
ここにも数々の芋類が
スーパーの外で美しく並んだ缶詰、でも一個取ると崩れそう

まとめ

ヤンキースとメッツの試合があり賑わうヤンキース・スタジアム

本当に起伏の多く階段があちこちにあり、歩いて本当に実感しましたし、くたくたにました。アパート住まいの住民のためであろうコミュニティ・ガーデンも多くある地区です
貧困問題もあるようですが、明るくフレンドリーな人が多かった印象。店舗や自宅の前で数人の男性が椅子に座って雑談をしながら道行く人の観察を楽しんでもいました。また、ヤンキース球場と隣接している事もあるからか、おれ達の球団ヤンキース、とどことなく誇らしげに思っているような気もしました。
地区に慣れていなければ、夜間での外出は極力避けられた方が賢明かと思います。


行き方
NYC地下鉄4番、D線161丁目か4番167丁目から便利。ハイブリッジまで徒歩10~15分程歩きます。

Acknowledgement
I’m so grateful to Hank O. for showing me around various places and sharing his knowledge.

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