ブロードウエィには、三つの大手運営会社があります。
一番大きいシューベルト(Shubert Organization)、二番目のネダ―ランダー(Nederland Organization)、そして三番目は、41あるブロードウエィ劇場の5つを保有するジュジャムシン・シアターズ(Jujamcyn Theaters LLC)です。聞きなれないこの会社名は、創業者の孫の名、Judith, James, Cynthiaの最初の文字を取った造語です。
今回は、それら会社が運営する劇場と二つの通りについてです。
1. リチャード・ロジャース劇場(Richard Rodgers Theatre)
リチャード・ロジャース劇場は、チャニン兄弟とクラップが手掛けた6つのブロードウェイ劇場の一番最初の劇場。一番最後の劇場は、マジェスティック劇場です。
大きい劇場だからでしょうか、マジェスティック劇場同様、より舞台を見やすくする球場のようなスタジアムシーティング(stadium seating)が用いらています。
様式は、ネオ・ルネッサンスで、外装のアーチとライトがとても印象的でした。
当初、劇場名は「チャニンの46丁目劇場(Chanin’s 46th Street Theatre)」でしたが、シューベルト兄弟の買収後、チャニンの名がなくなり、「46丁目劇場(The 46th Street Theatre)」となりました。
その後、ブロードウエイ運営会社、大手2番目のネダ―ランダー運営会社(Nederlander Organization)が買収し、作曲家リチャード・ロジャースに敬意を表し、再び劇場名が変わりました。
この劇場は、建築や運営そして名称もブロードウエィの大御所たちが関わっていたような印象を受けます。
ここは、アメリカの演劇界で最も権威ある賞、トニー賞の受賞作が11も上演されています。
・226 West 46th Street (ブロードウェイと8番街の間)
・1925年創設、1321席(Playbill)
・建物正面とオーディトリウム内装はNYCのランドマーク
・劇場で最も長い間上演演目はハミルトン(Hamilton)
・運営はネダーランダー・オーガニゼーション
2. ロジャース & ハマースタイン通り(Rodgers & Hammerstein Row)
リチャード・ロジャースは作曲家で、作詞家オスカー・ハマースタイン2世(Oscar Hammerstein Ⅱ )と組み、「王様と私」「サウンドオブミュージック」「サウス・パシフィック」等数々の素晴らしい作品を制作し、20世紀のもっとも偉大であり伝説のパートナーと言われています。
44丁目のブロードウェイと8番街の間は、アメリカのミュージカルに貢献したこの二人の名をつけ、「ロジャース&ハマースタイン通り(Rodgers & Hammerstein Row)と呼ばれています。
リチャード・ロジャース劇場は46丁目です。
3. ジェームス・エム・ネダーランダー・アレイ(James M. Nederlander Alley)
ジェームス・ネダ―ランダーは、ブロードウエィ運営会社大手のネダ―ランダー運営会社(Jujamcyn Theaters LLC)を設立した人。伝説のプロデューサーと言われ、功績に敬意を表し、小さいですが45丁目と46丁目の間のブロードウエィと並行する通りに名が付けられました。
ネダ―ランダー社は、世界でももっとも大きなエンターテイメント会社の一つです。
4.ラント・フォンテーン劇場(Lunt Fontanne theatre)
ラント・フォンテーン劇場は、200以上のブロードウェイ劇の監督・プロデューサーであったチャールズ・ディリンガム(Charles Dillingham)によって建設されました。
様式は、グランド・セントラル駅やニューヨーク公共図書館と同様のボザール(Beaux-Arts)で、重厚感あります。
劇場名の旧名、グローブ劇場(Globe Theatre)から、アルフレッド・ラント(Alfred Lunt)とリン・フォンテーン(Lynn Fontanne)の名を取った劇場名へと改名。この二人は夫婦で、舞台でも夫婦役で活躍され、引退を予定していた二人に敬意を表し改名されたそうです。
劇場は、大恐慌頃に映画館となり、所有者の破産等を経て、1958年に再び劇場となりました。
・205 West 46th Street (ブロードウェイと8番街の間)
・1910年創設、1,470席(Playbill)
・建物正面はNYCのランドマーク
・劇場で最も長い間上演された演目は、サウンド・オブ・ミュージック
・運営はネダーランダー・オーガニゼーション
5.アル・ハーシュフェルド劇場(Al Hirschfeld Theatre)
アル・ハーシュフェルド劇場は、喜劇・舞踊・曲芸などを催すヴォードビル(Vaudeville)の劇場主で経営者、そして演者でもあったマーティン・ベック(Martin Beck)により、1924年に建設され、劇場名もマーティン・ベック劇場でした。
のちの2003年、風刺画家アル・ハーシュフェルドの100歳の誕生日にこの画家の名に改名されました。
このハーシュフェルドは、 映画やブロードウェイのスター達のポートレ―トを描く事で有名で、どこかでご覧になった事があるかもしれません。この絵は誰かわかりますか。
作品は劇場内、メトロポリタン美術館、近代美術館やNY図書館見る事が出来るそうですし、44丁目にあるアルゴンキン・ホテル(Alguonquin Hotel)にも数点あります。
劇場内の建築は、ネオクラッシック様式の劇場が多かった当時、唯一、スペインのアルハンブラ宮殿に代表されるイスラムの影響を受けたムーア様式とビザンチン様式、内装は幾何学模様だそうで、きっと華やかで美しいと思います。
・302 West 45th Street (8番と9番街の間)
・1924年創設、1302席(Playbill)
・建物正面、ロビーとオーディトリウムはNYCのランドマーク
・最も長い間上演された演目は、キンキー・ブーツ
・運営はジュジャムシン・シアターズ
6.まとめ
さまざまな劇場が14~15ブロックの間にひしめき合っているブロードウエィ劇場街。4回にわたって紹介した劇場は一部の区間にあるほんの一部です。他にも、例えば、44丁目7と8番街の間にあるセント・ジェームス劇場 (St. James Theatre)や45丁目6と7番街の間いあるライシーアム劇場 (Lyceum Theatre)など、個性的で美しい劇場がまだまだたくさんあります。
次回、この華やかに凛と躍動し、もっともニューヨークらしい場所に思えるこの地区を訪れられた時、以前と違った視点で劇場を見て頂ければ本望です。また、観劇の際は、ショーだけでなく劇場の外装や内装にも目を向けてみると、もっと楽しく思い出に残るかと思います。
最後に、ライシーアム劇場の窓の写真をよく見てください、え?と思われるかと。
謝 意
I’m so grateful to Kevin K. for showing me around and sharing his knowledge.
参 照
・Richard Rodgers Theatre (1990) New York, NY | Playbill
・James M. Nederlander Memorialized With a Broadway Alley | Playbill
・Lunt-Fontanne Theatre (1957) New York, NY | Playbill
・Al Hirschfeld Theatre (2003) New York, NY | Playbill
・www.alhirschfeldfoundation.org
・www.jujamcyn.com
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