見タイ知りタイ! 行った気になる歴史と散策ブルックリン ⑫ サンセット・パーク・ターミナルズ – Sunset Park Terminals

アーミー・ターミナル

サンセット・パークには、中華街や商業施設が入っているインダストリー・シティなど賑やかな場所もあれば、遠くマンハッタンやNJを臨み静かに過ごせる公園もあります。
一方で、かつて運送や工業の拠点となり、また軍の基地となった2つのターミナルもあります。今は、ひっそりと佇み注目される事もほとんどないかと思ったので、あえて目を向け紹介します。

1.ブッシュ・ターミナル(Bush Terminal )

ブッシュ・ターミナル会社(Bush Terminal Company)は、石油精製所の所有者の父を持ち、裕福な実業家アービン・ター・ブッシュ(Irving Ter Bush)が創設し、荷物を輸送するBush Terminal、通称 Industry Cityを建設しました。
このターミナルは、複数の輸送手段を使い、荷を積み替えることなくドア・ツー・ドアのインターモーダル(Intermodal)輸送に加え、倉庫保管、製造工場もある複合施設でした。倉庫が1910年に、鉄道が1915年に、工場のロフト(工場上の広いスペースでしょうか)が1925年に完成なので、少しづつ設備を整えていったのでしょう。

アービン・ター・ブッシュ

20世紀初期当時、このような施設はNYCでは初めてで、かつ全米で最も大きい施設だったとの事。
第一次世界大戦時は海軍基地として利用され、その後オーナーに戻されますが、第二次世界大戦後1970年代頃には衰退していき、名称がインダストリー・シティとなっていったそうです。
かつて勢いがあったであろうこの場所は、建物も荒れたままに残され、すっかり落ちぶれ荒んだ印象。最盛期には69キロもの線路を保有していたそうですが、今は線路の一部の跡のみ。当時の賑わいを想像出来ず、なんとも言えない侘しさが漂っていました。

このような場所で、取り残されたようにひっそりと銅像として立つブッシュ氏が気の毒に思え、栄枯衰退を目にしたようでした。
でも、マンハッタンのブライアント公園近く42丁目にそびえるBush TowerはこのBush Terminal会社が、1918年に建設したそうです。何度も改装はされているそうですが、ミッドタウンの一等地にBushの名は残っています。余談ですが、政治家のBush家とは関係ないそうです

グレーの線が線路跡の一部 
放置された建物
たまたまかもしれませんが、人通りも少ない

2.ブッシュ・ターミナル公園(Bush Terminal Piers Park)

ブッシュ・ターミナル公園は、かつて複合施設であったブッシュ・ターミナルを整備し、サッカー場と野球場を備えた公園として、2014年にオープンしました。遠くにマンハッタンのダウンタウンが見えます。
また、ここは、NY近郊のオイスター・リーフの復元を目的としている非営利団体ワン・ビリオン・オイスター・プロジェクト(Billion Oyster Project)のフィールド・ステーションがあります。このプロジェクトは、NYC市内にブッシュ・ターミナルを含む9つのフィールド・ステーションあるそうです。

遠くにマンハッタンのダウンタウンが見えます

このプロジェクトの目的は、NY近郊でのオイスター・リーフ(Oyster Reef)の復元です。オイスター・リーフは何百もの生き物の生息地となり、また、災害時の大きな波の衝撃抑制、洪水の軽減、海岸線の浸食防止などから街を守ってくれるそうです。
今まで延べ約2万人の生徒や学生が関わっており、環境にもよく様々な学びも出来る良いプロジェクトかと思います。

オフィシャルサイトにあった、NYハーバーの歴史も興味深いです。https://www.billionoysterproject.org/harbor-history

Ⓒ billionoysterproject.org

このブッシュ・ターミナル公園は、オイスター・プロジェクト関係か、スポーツをする以外に来る人はなかなかいないかな、という感じでした。

3.ブルックリン・アーミー・ターミナル(Brooklyn Army Terminal:BAT)

ビルディングA 正面入口

ルックリン・アーミー・ターミナル(Brooklyn Army Terminal)は、ブッシュ・ターミナル公園の南側、ベイ・リッジとの境界の湾岸沿いにあります。その名の通り、米国陸軍用の施設として利用された場所で、広さは95エーカー。1エーカーがおよそサッカーグラウンド1つ分に相当するらしいので、サッカーグラウンドが約95面分の広さ。ブルックリン陸軍基地(Brooklyn Army Base )ともブルックリン陸軍補給基地(Brooklyn Army Supply Base )とも呼ばれてたそうです。

ビルディングA 正面入口、奥に小さく見えるのがビルディングB

ビルディングAとBと名付けれらた双子のような二つの大きなターミナルビルは、完成した1919年当初、世界で最も大きいコンクリートビルだったと。
外観は、ただただどーんと大きいだけの四角いビルという感じ。正面入口からも大きさは感じられるかと思いますが、奥にかなり長く伸びています。内部はどのように利用されていたかわからないのですが、線路跡もあり不思議な造りでした。頑丈で地味で目立たない外観は、軍施設であったなら、当然だったかもしれません。

奥に広いです。
向かって右がビルディングA、左がビルディングB
ビルディングの内部

第二次世界大戦後、年間20万人の兵隊が出発や到着する港でもあり、1958年にはエルビス・プレスリーがここから西ドイツへ出兵したそうです。貨物を積み込むための鉄道側線や軍の刑務所もありましたが、軍基地は1964年に閉鎖されました。
のちには、国際郵便を扱う郵便局で、一日18,000袋もの数を扱っていたそうです。

Photo:Natasha
Photo:Natasha

1983年に米国歴史登録財となっているAとBの二つのビルは、現在、軽工業、倉庫業、バックオフィス業務として活用されています。主なテナントに歴史博物館やグッケンハイム美術館、フォードのサービスセンター、NY市警察情報部、バイオサイエンス・センター、そしてジャックトレス・チョコレート等、様々な業界が利用しているそうです。
さらに、10,000人収容できるイベントスペースと450台分のパーキングスペース、またフェリーではマンハッタン・ダウンタウンから12分、地下鉄駅も近く、イベント会場としても利用されているそうです。

NYCフェリー・ロッカーウェイ・ルート(Rockaway Route)のフェリーがビルディングAのすぐ近くに止まります。
ビルディングAとBの周りは、中国語のサインの店舗もちらほらあり、自動車整備工場も多かった印象で
す。

ビルディングAすぐ横にあるNYCフェリーのサンセットパーク船着き場

4.まとめ

今回は、サンセット・パーク地区内でも、忘れ去られたかのようで、かなり地味な場所の紹介でした。しかし、それでもかつては、運搬業や海軍基地としても利用されたブッシュ・ターミナル、そして、そこからほんの少し南の陸軍基地であったアーミー・ターミナル。人や物の動きが活発で熱気あふれていた様子を想像して頂ければ嬉しいです。
週末だったからか、ブッシュ氏の銅像のある辺りやブッシュ・ターミナル公園付近は人影すくなくひっそりしていたので、訪れる際は複数で明るい時間に行く事をお薦めします。
アーミー・ターミナルも週末故か、人は少なかったです。でも、ゲートや建物入り口にセキュリティー職員がいましたし、フェリー乗り降り場も近かったので、人の動きはあり、特に問題はない様子でした。

行き方

・サンセット公園へはNYC地下鉄R線の45丁目駅

・アーミー・ターミナルへは、NYC地下鉄のRかN線59丁目駅か、NYCフェリーのロッカウェイ・ルート(Rockaway Route)のサンセット・パークが便利

謝 意
I’m so grateful to David L. and Hank O. for showing me around various places and sharing their knowledge, and to Natasha for allowing me to use her photos.

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