見タイ知りタイ! 行った気になる歴史と散策マンハッタン ⑨ 南セントラル・ハーレム – South of Central Harlem

セントラル・ハーレム

ハーレム地区と聞くと、治安が悪く危険と想像されやすく、確かに、そういう場所でもあると思います。しかし、他のマンハッタンの地区と同様、さまざまな移民グループが住み、素晴らしい建築物が残る歴史地区があり、ハーレム・ルネッサンスの動きやジャズなど独特で豊かな文化が生まれ発展した地区でもあります。
さらに、あまり知られていないかもしれませんが、1870から1930年代頃まで、ユダヤ教の人々が多く住み、40から50のシナゴグがあったジューイッシュ・ハーレム(Jewish Harlem)だったそうです。現在、シナゴグを黒人教会として使われている建物も少なからずあるそうで、かつてユダヤ人と黒人の人々が共存していた地区でもあります。
今回は、セントラル・パーク北端の110丁目から120丁目辺りの地区の紹介です。

ウォーキングに参加し、知らなかった事が多く新たな一面を見た気がしました。その経験を共有したく、また、治安が悪い地区だけでない事を知って頂くきっかけになればとても嬉しいです。

1.セントラル・パーク・ノース(Central Park North)

110丁目と5番街角にあるアフリカ・センター

セントラル・パークの北端110丁目の両角には、59丁目角にあるコロンバス・サークル程大きくはありませんが、サークルがあります。
東側、110丁目と5番街角に、デューク・エリントン・サークル(Duke Ellington Circle)があり、ミューズに支えられピアノと共にすっと立つエリントンの像があります。またそのすぐ傍に、大きくはありませんが充実した内容のアフリカン・センターがあります。もう一方は、110丁目と8番街との角にはフレデリック・ダグラス ・サークルです。

110丁目と5番街のデューク・エリントン 
Photo by James
110丁目と8番街にあるフレデリック・ダグラス

また、セントラル・パークの110丁目沿いには、オランダ語で小さな海(small sea)と言う意味のミアー(Meer)と名付けられた人工湖のハーレム・ミアー(Harlem Meer)があります。ビジター・センターである Dana Discovery Centerで、家族連れでも楽しめるアクティビティ、特に、夏にはフリー・コンサートなどの情報を得られます。静かに四季折々の美しい景色を楽しむのも良いかと思います。

ハーレム・ミアーとビジター・センター
夏のフリー・コンサート
Gate of the Exonerated Photo by John K.

さらに、ここには、解放のゲートや免罪者のゲート(Gate of the Exonerated)と訳されているゲートがあります。
約35年前の1989年4月19日夜、白人女性が襲われ性的暴行事件、セントラルパーク・ジョガー事件が起こり、The Central Park 5ともThe Exonerated Fiveとも呼ばれた黒人やヒスパニックのティーン5人が、誤って逮捕され有罪判決を受けたのです。彼らの受けたえん罪と経験を記すため、19世紀以降初めて唯一追加されたセントラルパークの公式の入り口名となっています。

2.マルコムX・ブルーバード(Malcom X Boulevard)

2つのストリートサイン

セントラルパーク北端から、かつてアフリカ系アメリカ人のために活動をした偉人3名の名が付けられた大通りがあります。
セントラルパーク南では、北へ向かっての一方通行の6番街は、公園北110丁目からは、両面通行でマルコムX・ブルーバードとなります。
実は、この大通りは、慈善家ジェームス・レノックス氏の名からレノックス・アベニュー(Lenox Avenue)と1887年に命名されました。し
かし、その100年後の1987年、マルコムX・ブルーバードとも名付けられ、二重命名となっているそう。混乱がない事もないようです。

マルコムX  Photo from Wiki

通りの名のマルコムXは、言わずと知れたアフリカ系アメリカ人から支持された黒人解放運動指導者でイスラム教導師。
遠い昔に、白人奴隷オーナーによって強制的にアフリカ姓をはく奪されたまま永久に分からなくなってしまった本当の家族姓を未知としての“X” と名乗ったマルコムX。

1965年2月21日、ハーレム地区北側のワシントンハイツ地区にあるオーデュボン舞踊場(Audubon Ballroom:165丁目とブロードウェイ)でスピーチ中に暗殺され、39歳の若さで他界してしまいます。

元オーデュボン舞踊場(Audubon Ballroom) Photo from Wiki

3.アダム・クレイトン・パウエル・ジュニア―・ブルーバード(Adam Clayton Powell Jr. Boulevard)

アダム・クレイトン・パウエル・ジュニア
Photo from Wiki

セントラルパーク南では、南へ向かっての一方通行の7番街が、公園北110丁目からは、両面通行でアダム・クレイトン・パウエル・ジュニア・ブルバードと名が変わります。
この通りの名のアダム・クレイトン・パウエル・ジュニアはどんな人だったのでしょう。1945年から1971年までニューヨーク市ハーレム地区を代表して米国下院議員を務め、バプテスト派牧師および政治家。ニューヨーク州のみならず北東部の州から連邦議会に選出された初のアフリカ系アメリカ人。とてもハンサムでカリスマ的だったそうです。1972年63歳で亡くなっています。

125丁目にある力強いパウエル・ジュニア

.フレデリック・ダグラス・ブルーバード  (Frederick Douglass Boulevard)

1879年頃のフレデリック・ダグラス 
Photo from Wiki

先の二つの通りより少し細目の通り。セントラル・パーク南の8番街が公園横を通って途切れることなく続き、公園北110丁目から名はフレデリック・ダグラス・ブルーバード  となります。
通り
名のフレデリック・ダグラスは、メリーランド州出身の元奴隷、後に奴隷制度廃止運動家で政治家となった人。リンカーンやジョンソン大統領などと黒人参政権について協議したり、南北戦争後、解放奴隷救済銀行の総裁を務め、1895年死没。

それぞれの通りの名は長いので、以下文中では、マルコムX通り、パウエル通り、ダグラス通りと記載します。
また、この三本の大通りを横切った後セントニコラス・アベニューが北に延び、シュガーヒルに繋がります。

.マスジド・マルコム・シャバズ(Masjid Macolm Shabazz)

116丁目にあるマスジド・マルコム・シャバズ
Photo by John K.

マルコムX通りとパウエル通り間の116丁目に、個性的なモスクがあります。以前はモスクNo.7と呼ばれたスンニ派イスラム教モスクで、1964年までマルコムXが教えを説いていた場所でもあったそうです。
緑色のタマネギのようなドームが特徴です。

ちらちらとシャバズ(Shabazz)という単語が出てくるのですが、定かではありませんが、預言者との意味合いのようです。

116丁目にあるファースト コリンシアン バプテスト 教会
Photo by John K.

同じく116丁目、パウエル通りとダグラス通りの間に、ファースト コリンシアン バプテスト 教会(First Corinthian Baptist Church)もあります。

6. マルコム・シャバズ・ハーレム・マーケット(Malcolm Shabazz Harlem Market )

マルコム・シャバズ・ハーレム・マーケット

マルコム・シャバズ・ハーレム・マーケットは、アフリカからの製品を販売し、116丁目のマルコムX通りと5番街の間にあります。
太陽の強さを跳ね返すような鮮やかな色の衣類、木彫り作品、楽器、生活用品が販売されています。簡易な屋根が所々はがれていたり、マーケット名やサインが一部なかったりしているのもご愛敬な感じですが、異国情緒満点です。
お肌つやつやになる本場のアフリカン・ブラック・ソープもありました。

Photo by Edwin D.C.
Photo by John K.

7. リトル・セネガル( Little Senegal:Le Petit Sénégal)

116丁目のリトル・セネガル

リトル・セネガルは、セネガルなど西アフリカからの移民のコミュニティ。比較的新しく境界もはっきりしないようですが、116丁目、ダグラス通りとマルコムX通りの間位だそうです。
ほんの1~2ブロックの間に、足首まである長い民族衣装を着た男性があちこちで集まって立ち話をしていて、写真を撮るのが失礼な気がしてためらいました。西アフリカのお店、レストラン、ベーカリーやカフェなどがあり、人々を支え、集える通りのようです。


.ミントンズ・プレイハウス(Minton’s Playhouse)

ミントンズ・プレイハウスの入り口  Photo by Mary G.

ミントンズ・プレイハウスは118丁目、ダグラス通りとパウエル通りの間、セシル・ホテル(Cecil Hotel)の一角にあります。1938年、テナーサックス奏者のヘンリー・ミントンが設立し、ビバップ(bebop) などモダンジャズの発展に重要な役割を果たしました。ちょうどアメリカが大恐慌から回復している頃でしょうか。
ジャズ好きな方にはたまらないそうそうたる顔ぶれのミュージシャンが演奏していたそうです。私がわかる名は、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)、チャーリー・パーカー、マイルス・デイビスくらいですが。
何度か閉店の憂き目に遭ったそうですが、2013年、高級ジャズクラブとレストランとして復活したそうです。
建物は国家歴史登録財およびNY市ランドマークになっています。

.レストランやベーカリー

こじんまりしたLee Lee Baked Goods店

ダグラス通りをはじめとして、この辺りには、様々なレストラン、ベーカリーが数多くあります。
ほんの一例ですが、ダグラス通り沿いには、
・113丁目: エチオピア料理Lalibela  

  (917) 881-9775のみでホームページはないようです。
・116丁目: 中東料理のSilvana
http://silvana-nyc.com 
 音楽演奏も楽しめる人気店
・117丁目:ベーカリーのLevain Bakery http://levainbakery.com

 オリジナルは 74丁目店。クッキーが人気で店舗は増加中。
・118と119丁目の間:ドイツ系スーパー、リドル(Lidl) 

Mr. Leeとルーグラ 
Photo from Store‘s Website

個人的にもう一度行きたい場所は、118丁目ダグラス通りに近い焼き菓子Lee Lee’s Baked Goods。http://leeleesbakedgoods.com 
おそらく店主
であろう通称Mr.Lee(本名 Alvin Lee Smalls)が作るユダヤ系スイーツ、ルーグラ(Rugelach)がとても美味しく人気ですので是非。ある意味、2つの文化が融合したようなお店です。

これら以外にも、116丁目マルコムXとパウエル通りの間に南部料理のAmy Ruht’s http://amyruths.com  など数多くレストランがあります。

10.まとめ

今回紹介した地区では、116丁目のマルコムX通りとダグラス通りには、宗教施設、マーケットなどが集中しているようです。
ただ、以前より治安は良いようですが、やはり危険な場所もあるようです。地区をよくご存じなければ、周りに留意しつつ明るいうちに訪問される事を強くお勧めします。

もし、日が暮れたら、街灯などで明るく人気が多い通りを出来るだけ歩くように心がけてください。

一時通行止めされた通りで遊ぶ子供達

行き方の参考
NY市地下鉄 2と3番線の116丁目駅またはセントラル・パーク北駅、
BとC線の116丁目駅またはカテドラル・パークウエィ駅、
6番線の110丁目駅からも少し歩きますが、便利です。

謝 意
I’m so grateful to Leigh H., David L., and Hank O. for showing me around various places and sharing their knowledge, and also, to James、John K. , Mary G.、Edwin D.C. for allowing me to use their photos.

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