見タイ知りタイ! 行った気になる歴史と散策ブルックリン ④ ブッシュウィック:建築と歴史地区_Bushwick : Architectures and Historic District

ニューヨーク市観光

ブッシュウィックは、壁画やビール以外にも、見逃せない素晴らしい教会などの建築物や歴史地区もあります。

1. セント・バーバラ教 (St. Barbara Roman Catholic Church)

セント・バーバラ教会は、ドイツ系カソリックのコミュニティのために、1910年に建設されたスパニッシュ・バロック・リバイバル・スタイル。両側にタワーがあり前からも横からもとても美しいです。教会の名は、聖人名からとも、教会区に貢献したビール醸造人の娘Barbaraから名付けられたとも言われています。この存在感あふれ美しい教会はBleecker Streetにあります。

St. Barbara Roman Catholic Churchの正面
St. Barbara Roman Catholic Churchを横から

2.サウス・ブッシュウィック教会(South Bushwick Reformed Church

South Bushwick Reformed Church

サウス・ブッシュウィック教会は、1852年に建設されたオランダ系改革派教会です。
別名は、「白い教会(White Church)」。見た目そのまま感のある名前です。Bushwick Avenueにあります。
セント・バーバラ教会より先に建設されています。

3. 警察署

83rd Precinct Police Station and Stable

一見、地味なお城のような、砲台のない要塞のようなこの建物。ここは、83分署警察署ときゅう舎( 83rd Precinct Police Station and Stable: Wilson AvenueとDekalb Avenueの角)。
1894年建設のロマネスク・リバイバル様式。1982年に国定史跡登録され、現在は、NYPD北ブルックリン区パトロール隊 (NYPD Patrol Borough Brooklyn North) が利用しているそうです。警察が史跡を使うのには、少し驚きました。どうりで、国旗が目立つところにあるのはそのためでしょうか。

4.建築家:エンゲルハート

かつて北ブルックリン地区に貢献した偉大な建築家の一人とされるてテオバルト・エンゲルハートTheobald Engelhardt)がいました。
ドイツ人の両親のもとに1851年にブルックリンで誕生。何千という工場、教会、商業施設や一般住宅等幅広くデザインを手掛けた人で、ブッシュウィックにも建物が多く残っています。
一例として、ロマネスク・リバイバル・スタイルでレンガ作りの1884年にデザインされたエンゲルハート自身のオフィスだったアリオン・ホール(Arion Hall:27 Arion Place)があります。

       Arion Hall

また、1890年頃に完成したビクトリアン・ゴシック・スタイルのドイツ系のセントマークス教会と学校(St. Mark’s Evangelical Lutheran church and school )もエンゲルハートの作。現在は、尖塔がなくなり、高級住宅となっています。

St. Mark’s Evangelical Lutheran church 尖塔あり
St. Mark’s Evangelical Lutheran church 尖塔なし  Photo: Brigitte S.M.

一部しか残っていませんが、ウルマ―醸造所(Ulmer Brewery:31 Belvidere Street)跡や、グリーンポイントのミルトン・ストリートにあるセント・ジョン教会(St.John‘s Lutheran Church:155 Milton Street)もエンゲルハートのデザインです。

   Ulmer Brewery跡 
 グリーンポイントにある
St. John’s Lutheran Church

ブッシュウィック近郊にあるエンゲルハートのデザインした建物は、レンガやテラコッタが使われた赤茶色っぽい建造物が多く、どっしりと落ち着いた印象でした。

5.歴史地区

Linden Street

ブッシュウィックには、NYCで一番新しい歴史地区があります。小規模ですが、ブロードウェイとブッシュウィック・アベニュー間のリンデン・ストリート(Linden Street)のワンブロックが、2023 年5月にブッシュウィックでは初の歴史地区と指定されました。
歴史地区指定されると、家の価値は上がるけれど、無断で外装を変える事は出来なくなるため、住民の想いは複雑なんだそうです。

Linden Street

6.ブッシュウィックの過去とこれから

ブッシュウィックには、暗い過去がある事もお伝えします。
街は、1970年代頃までドラッグとギャングの天国で、「ドラッグ・スーパーマーケット」と呼ばれていました。さらに、1977年7月に起こったNYCの大停電でさらに治安が悪化。放火、略奪、暴動の被害が近隣のクラウン・ハイツと共にNYC内で最も酷く、当時の様子は、1945年のドレスデンのようだったそうです。人口の約40%の流出による空き家の増加。失業によりさらに違法ドラッグの取引の増加、と悪循環に陥りました。

また、1989年、地域の麻薬取引追放運動に非常に熱心だったマリア・ヘルナンデス氏(Maria Hernandez)が、ドラッグ・ディーラー達の手によって、狙撃による殺害もありました。市民の憩いの場、マリア・ヘルナンデス公園は、彼女の勇敢な行動に敬意を表し、以前のブッシュウィック公園から、彼女の名へと改名されたそうです

当局は、麻薬取引活動の減少、商業地区の活性化に努めており、2021年のニューヨーク・タイムスによると、ブッシュウィックの犯罪率は前年比でほぼ24%減少し、この傾向が続くとの予想。この犯罪率の減少と近隣のウイリアムズバーグなどでの家賃高騰もあり、倉庫を改造したロフトなどに若い人達やアーティスト達が住み始め、スタジオやギャラリーも増え、ヒップな街として活気づいてきています。

7.まとめ

ブッシュウィックは、歴史とヒップが同居し、日々変化するエネルギー溢れる街の印象でした。壁画や歴史建築物を鑑賞しながら散策を楽しまれ、疲れた時の一息は、やはりビールを一杯でしょうか。 
ただ、過去に深刻な貧困と麻薬問題があった街ですから、地区に馴染みがなければ、日が暮れるまでに訪問される事を強くお勧めします。

謝 意
I’m so grateful to David L., Tim, Kevin K. for showing me around various places and sharing their knowledge, and also to Brigitte S. M. for letting me use her photos.

参 照
Onofri, Adrienne. Walking Brooklyn. Wilderness Press, 2017.

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