二ューヨークシティには区(Borough)が5つあります。
そのうちの一つ、ブルックリンは、教会の多い区(Borough of Churches)や多種建築の家がある区(Borough of Homes)とのニックネームがあり、今回のグリーンポイントは、どちらも当てはまる感じの街です。
また、街の東西に走るストリート名は、若干例外はありますが、北からAsh, Box, Clay, Dupont, Eagle, Freeman, Green,のようにアルファベット順になっています。
住民の約75%が白人、特にポーランド系の住人は、シカゴに次いで全米で二番目に多く、リトル・ポーランドとも呼ばれる程。加えて、昔から何世代にわたって住んでいる人も多いそうです。
1.これぞ!グリーンポイントの教会
グリーンポイントには、様々な様式の建造物がある中で、特筆すべきは、マンハッタン・アベニューとミルトン・ストリートの角ににあるSaint Anthony of Padua Roman Catholic Churchです。グリーンポイントのどこからでも見える尖塔がある、この1873年に建造された優雅で美しい教会はアイルランド系Patrick Keelyの設計。Keelyは米国で600以上のカソリック教会を設計しましたが、その中でもこの教会は最も素晴らしい教会の一つだそうです。
余談ですが、この教会のすぐ近くに、アメリカらしいびっくりするような独特のコインランドリー、Sunshine Laundromatがあります。一見、ごく普通。でも、一番最初にお酒ライセンスを取得したコインランドリーで、かつて、1920年から1933年頃の禁酒法時代のアルコールを密売する場所、スピークイージー(Speakeasy)だったそうです。奥に進むとレトロな感じのバーがあり、懐かしい感じを含めた数々のピンボールも売りのようです。平日は夕方5時から、週末は正午から開店で、閉店は毎日朝の2時。
洗濯中の待ち時間に一杯、二杯、家に帰る頃には酔っ払い、かも。
2.ミルトン・ストリート
この教会の前を走るミルトン・ストリートは、アメリカ建築家協会(American Institute of Architects : AIA)によると、NYC内で最も美しい通りの一つと言われており、そこからの眺めはひと際美しいです。ただ、訪れた時がそうだったのですが、木々に葉が茂ってくるとかなり隠れてしまいます。
また、同じくミルトン・ストリートには、北ブルックリンで活躍したドイツ系建築家テオバルト・エンゲルハート(Theobald Engelhardt)のデザインしたセント・ジョン教会(St.John‘s Lutheran Church:155 Milton Street)もあります。外装は素晴らしいのですが、中は財政的な厳しさを感じる若干朽ちた印象でした。
3. アストラル・アパート(Astral Apartments)
その他の貴重な建築物として、アメリカの石油産業のパイオニアで、アストラル石油会社(Astral Oil Works)の創立者チャールズ・プラット(Charles Pratt)が、同社の従業員用に建築したAstral Apartments (184 Franklin St.) があります。同氏は、同じくブルックリンにある私立大学 Pratt Instituteの創立者でもあります。1885~1886年に建てられたクイーン・アン様式のテラコッタのこの建物は、一ブロックを占める大きさがあり壮大で素晴らしく、国とNY市の歴史建造物となっています。
現在は、賃貸アパートとなっているようです。
4.工房や工場
また、グリーンポイントには、アメリカやヨーロッパでも名をはせた工房や工場もありました。
その一つに、1862 年から 1922年にかけ、当時アメリカで最も重要な陶器工房と言われたThe Union Porcelain Works。建築家で不動産開発者でもあったThomas C. Smith の代に栄え、この Smith氏は、ミルトン・ストリートをも手掛けたそうで、なかなかのやり手。この工房製作の陶器は、メトロポリタンやブルックリン・ミュージアムに展示されています。
さらに、エバーハード・ファーバー社(Eberhard Faber)の鉛筆工場がGreenpoint Ave.とFranklin St.にありました。当初、マンハッタンの現在の国連本部がある場所の一部に工場があったそうです。しかし、1872年に消失した際、対岸にあるグリーンポイントで再建。現在、建物はワークスペースと高級アパートになっていますが、壁面によく知られたひし形と星のトレードマークの入った鉛筆が描かれ、当時の面影を残しています。
5.歩道時計
マンハッタン・アベニューにある歩道時計(Sidewalk Clock)は、一見普通の歩道にある時計に見えますが、NYCに7つ残っている歴史的建造物として歩道時計のうちの一つで、ブルックリンではここだけです。他にはマンハッタンに4つ、クィーンズに2つあるそうです。
6.メディア
グリーン・ポイントには、2つのTVや映画制作会社があり、古い建築物、川沿いの景色、そして交通量がそこまで多くない事もあり、撮影によく使われるそうです。例えば、マンハッタン・アベニューにある60年の歴史を持つドーナツ屋「Peter Pan Donuts」は、映画Spider-Man: No Way Homeにも、(実際はレプリカを作成したらしい)出てきます。
7.一休みに
買い物は、メインストリートであるマンハッタン・アベニューが商業の中心、そしてフランクリン・ストリートはビンテージの服や家具屋が多いそうですので、散策時の参考にして下さい。 ちょっと喉が渇いたらビール醸造所・バーの「Threes Brewing」、小腹が空いたらNYCのベストピザとランクされ評判のピザ屋「Paulie Gee’s Slice Shop」。また、ポーランド系の人が多いからか、ベーカリーも多く、Manhattan Avenueにある懐かしい感じのOld Poland Bakery(926 Manhattan Ave.)はパンもそして甘くないケーキもお手頃で美味しかったです。また、Jaslowiczanka Bakery (163 Nassau Ave.)も人気店のようです。
8. トランスミッター・パーク(WNYC Transmitter Park)
グリーンポイントにいくつかある公園の一つに、イーストリバー沿いの、トランスミッター・パーク(WNYC Transmitter Park)があります。こじんまりした公園ですが、一見物置小屋のような昔のラジオ放送局があった建物があり、また、そこからのマンハッタンの景色は絶景です。その他には、ウイリアムズバーグとの境界に位置する広々としたマッカレン公園(McCarren Park)も市民の憩いの場となっています。
9.まとめ
グリーンポイントは、長い間労働者階級と移民の地区と言われ、人気が高く話題になる隣のウイリアムズバーグの陰に隠れてひっそり佇んでいる印象が個人的にはありました。しかし、かつての繁栄した産業の面影も残し、まだ再開発もそこまで進んでいないからか落ち着いた魅力あふれる街でした。中心地はそんなに広くないので、お天気の良い日の散策にぴったりです。
行き方
グリーンポイントへは、NYC地下鉄G線のGreenpoint駅かNassau駅が便利です。
謝 意
I’m so grateful to David L. and Kevin K. for showing me around various places and sharing their knowledge, and to Donna M. for allowing me to use her photos.
参 照
・Greenpoint, Brooklyn – Wikipedia
・Onofri, Adrienne. Walking Brooklyn. Wilderness Press, 2017.