見タイ知りタイ!行った気になる歴史と散策クイーンズ ⑧ ジャクソン・ハイツ – Jackson Heights 

観光

クイーンズ区ジャクソン・ハイツは、中南米や南アジアの大きなコミュニティがあり、NY市内、おそらく全米でも最も多様性のある街の一つと言われています。また、イギリスのガーデン・シティ運動の影響を受けて作られた中庭のある美しいガーデン・アパートが並ぶ街でもあります。この街の新たな一面をご紹介できたらと思います。

ガーデン・アパート(Garden Apartments)

ジャクソン・ハイツにあるアパート群は、住宅開発業のクイーンズボロ・コーポレーション(Queensboro Corporation)が農地や土地を購入し、当時、米国初で最大のガーデン・アパート・コミュニティとして、1910年頃から1939年頃にかけて計画的に作られました。サイドウォークから少し離れ、庭のある優雅な暮らしができるアパートは、ガーデン・アパートやイングリッシュ・ガーデン・ホームとも呼ばれます。エリアはジャクソン・ハイツ歴史地区であり、米国国家歴史登録財、米国歴史地区、NY市ランドマークとなっています。

門柱の翼のあるライオンがあちこちに
アパートの中庭

アパートはレンガ造りで、様式はチューダー、イタリア風、地中海風やジョージアのリバイバル様式。アパート名もイギリス風のリンデン・コート、ケンブリッジ・コート、ハンプトン・コートなど。そしてスパニッシュ・ガーデンズ、スパニッシュ・タワーとの名もあります。また、1923年築15の建物から成るシャトー(The Chateau)は、フランス・ルネッサンスのお城をモデルにしているそうです。ヨーロッパ風の様式や名前が高級感に繋がったのでしょうか。あるアパート群の中庭へのゲートの全ての門柱に翼のあるライオンが護神のように鎮座していました。

Photo : John K.
Photo : John K.

ガーデン・アパートは、マンハッタンのダウンタウンに多くあった風通し悪く日照が少なく混み合ったアパート(Tenements)などから引っ越したい中所得層から中高所得層の労働者向けだったそうです。しかし、当時は入居審査が厳しく、アングロサクソンの白人プロテスタント(White Anglo-Saxon Protestants:WASP)に限定され、ユダヤ系、ギリシャやイタリア系そしてアフリカ系の人々は除外されたとの事です。

緑がアパートの内部にある庭です
トラバーズ公園近く, 週末には歩行者天国

2.メルティング・ポットの縮図

Photo : Lisa O.

ジャクソン・ハイツはNY市そして米国内でも最も多様性のある街の一つで、2015年のドキュメンタリーでは、アメリカのメルティング・ポットの縮図( microcosm of the American melting pot)と表現されたそうです。
2010年の国勢調査では、ラテン系 56.5%、 アジア系22.0%、白人 17.2%、アフリカ系 2.0%。2000年代以降、人口の半数が外国生まれ。南米、特にコロンビア、エクアドル、アルゼンチン、そして南アジアからは、バングラデシュ、パキスタン、チベット、ネパール、インド出身者が多く、商店の多くはラテン系かアジア系のオーナーだそうです。
写真のように、さまざまな国や文化の店が立ち並んでいました。

Photo : James
74丁目中央にでんと店を構えるPatel Brothers食材店
Photo :James

74丁目はリトル・インディア。この通りにはインド系食材店Patel Brothersを中心に、ジュエリー、サリーなどを扱うお店がびっしり並びとても賑わっています。73丁目はリトル・パキスタン、リトル・バングラデシュ、そして77丁目東には南米系が集まっているそう。37番街沿いはリトル・コロンビアもあるとの事。抗争はないのかな、と心配になりますが、とにかくカラフルで活気に満ち、生きていく力強さ逞しさを感じます。

高架のNY市地下鉄 兎に角うるさいのなんの

37番街から商業地大通りのルーズベルト・アベニュー沿いに店舗がびっしり並んでいますが、通りの上を走る地下鉄の騒音がとにかく凄い。近くにいる人の言っている事も聞き取れず、しばらく居ると頭痛がしそうな程。慣れるのかもしれませんが。個人的には、あの騒音もジャクソン・ハイツかとも思います。

3.各国料理

フチャカ 
モモ

ルーズベルト・アベニュー沿いは各国のストリート・フードがフード・トラックやカートなどで販売されています。例えば、バングラディシュやインドで親しまれているスナックのフチャカ(Fuchka)、ネパールの小籠包や餃子のようなモモ(Momo)。

アレパ
エンパナーダス

それからコロンビアの肉や野菜豚の串焼きチュゾス(Chuzos)やアレパス(Arepas)、ギリシャのこちらも串焼きのスブラキ(Souvlaki)、トウモロコシの粉を練って蒸し上げたちまきのようなメキシコや中南米の伝統的な食べ物タマレス(Tamales)、揚げてカリカリのエンパナーダ(Empanada)やスイーツのチューロス(Churros)、スムージーのような飲み物バティード(Batidos)、その他の様々な食べ物飲み物が提供されています。

コロンビア料理店

また、コロンビア、ウルグアイやアルゼンチンのパンやスイーツを販売する La Nueva Bakery やUruguayan Café、とにかく甘い甘いインドのお菓子ミターイー(Mithai)を販売するお店も。
タコスをお肉とスパイスを一緒に煮込んだスープにつけて食べえるビリア・タコスを扱うメキシカン・フードトラックのBirria-Landiaは、NY市でベストと聞いた覚えがあり、賑わっています。チベット料理、ヒマラヤ料理など様々な国のレストランもあちこちにあり、食を堪能できる事は間違いないです。

La Nueva Bakery・Cafe Photo :Carole
ビリヤ・タコスのフードトラック
Birria-Landia
インド系スイーツ店 Maharaja Sweets
モモのフードトラックのようPhoto : James
ネパール料理店  Photo : James
ヒマラヤン・レストラン Photo : James

4. 聖ジャンヌ・ダルク教会 (Church of St. Joan of Arc)

ジャンヌ・ダルク教会
ジャンヌ・ダルク教会の中
聖ジャンヌ・ダルク
刑務所のオリジナルの1431年の石

ローマ・カソリックの聖ジャンヌ・ダルク教会には、聖ジャンヌ・ダルクが祀られ、教会入り口右手に、1431年、投獄された監獄の石がありました。
1431年は、日本では室町時代。正直、そんなに古そうに見えず、ほんもん?? と思わずにいられませんでした。教会でそんな事を思う私は不届き者。

5.スクラブル(Scrabble)

コミュニティ合同メソジスト教会

ボード・ゲームの定番の一つに、スアルファベットで単語を作り得点を競う言葉遊びのスクラブル(Scrabble)があります。1948年にアメリカで作られたこのゲームの共同開発者である建築家のアルフレッド・M.・バッツ(Alfred M. Butts)がジャクソン・ハイツに住んでいました。ジャクソン・ハイツで一番古い教会のコミュニティ合同メソジスト教会(Community United Methodist church)でゲームを試し、この教会はゲーム誕生の場所だそうです。教会前の35番街と81丁目の角にあるストリート・サインは、ゲームのようにアルファベットの右横下に数字が書いてあります。売れ始めるまで時間がかかったそうですが、今では英語以外の言語でも作られているほどの人気ゲームです。

スクラブル
アルファベット横に番号が付いてる 
Photo : John K..

ちなみに、NY市では、通常、ストリート・サインは緑色ですが、茶色は歴史地区を示します。歴史地区では、無断で建物の外装を変える事は出来ません。

6.LGBTコミュニティ

ジャクソン・ハイツにNY市で2番目に大きいLGBTコミュニティがあります。始まりは、1920年代に地下鉄7番線で繋がっていて家賃も安い事もあり、ブロードウエィのLGBT俳優たちがジャクソン・ハイツに移り住み始めたからだそうです。LGBTコミュニティは、1990年のフリオ・リベラの殺害をきっかけに運動/活動を始めます。そして、1999年のLGBTのパレードでは、約70のコミュニティとおよそ4万人の人が参加する程の規模だったそう。LGBTコミュニティは規模も多様性もますます広がり、高齢者のゲイ向けのセンターもあるそうです。

7.ダイバーシティ・プラザ(Diversity Plaza)

ダイバシティ・プラザ  Photo : John K.
ダイバシティ・プラザ  Photo : John K.

歩行者用のオープンスペースのダイバシティ・プラザは、地下鉄駅近く北側にあり文化的や季節のイベントに利用されます。ここにはわーっという感じで様々な店舗が並び、若干ごちゃごちゃ感がありますが、賑わっています。かなり無理無理承知で言えば、ネオンが全くない規模が超ミニサイズのタイムズスクエアでしょうか。なんじゃそれ、ですね。

8.まとめ

今回は、街の中央を横切るノーザン・ブルーバード(Northern Boulevard)の南側を訪れました。商店などがびっしりと並ぶルーズベルト・アベニューの上を地下鉄が走り、その騒音が本当に半端ない。でも、それに負けない位の活気に満ち溢れ、個々がたくましく生きていると感じました。
また、この喧騒からほんの数ブロック離れた所に、美しいアパートが並んでいるのには驚きました。優雅に佇むアパート群と賑やかな通りの人と店舗、静と動。そして多様性。それがジャクソン・ハイツの魅力と感じました。
治安は悪い印象はありませんでした。最寄り地下鉄の駅は5線が停車するハブ駅で便利ですので、エスニック料理が食べたくなったら是非どうぞ。

行き方
NY市地下鉄 E, F, MとR線のRoosevelt Ave.-Jackson Heightsか7番線 74 St-Broadway駅 が便利です

Acknowledgements
I’m so grateful to David L. for showing me around various places and sharing his knowledge.
Also, to James, Lisa O., Carole, John K. for allowing me to use their photos.

参 考
・Onofri, Adrienne. Walking Queens. Wilderness Press, 2014.
Jackson Heights – Wikipedia
jackson_heights.pdf

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