見タイ知りタイ! 行った気になる歴史と散策ブロンクス ① 南ブロンクス:グランド・コンコース – South Bronx:Grand Concourse

グランド・コンコース

179丁目からマンハッタンを望む from Wikipedia

今回は、街ではなく、南ブロンクスにある大きな通りグランド・コンコース:Grand Concourseです。この大通りは、138から 161丁目まで約 8.4キロ(5.2マイル)の長さがあり、幅は55メートル。
フランスからの移民 Louis Aloys Risseがデザインし、1894年から約15年の歳月と莫大な費用をかけ作られました。一時期は、「ブロンクスのシャンゼリゼ通り」とも、「夢の大通り:The Boulevard of Dreams」とも呼ばれ、今も残るアールデコ調の建物も多く、華やかな大通りだったそうです。特にこの長い通りの南側にある様々な建物は国家歴史登録財であり、NYC史跡保存委員会はNYCのランドマークと指定しています。

ブロンクス出身の有名人のサインが各通りに
長くて広いグランドコンコース

1. 元コンコース・プラザ・ホテル(Former the Concourse Plaza Hotel)

この大通り沿いの傑出した建物の一つが、161丁目にある元コンコース・プラザ・ホテル(The Concourse Plaza Hotel)。かつてヤンキースのベイ・ブルースなど人気スポーツ選手や野心向上心満々の政治家など数々の有名人を魅了し、社交の場であったホテル。しかし、1970年代頃から衰退し、1983年に高齢者向補助住宅、そして現在は低中所得者の住居となっているそうです。びっくりするほどの変わりように驚きです。

元コンコース・プラザ・ホテル

2.ブロンクス郡裁判所(Bronx County Courthouse)

ブロンクス郡裁判所  Photo : John K.

また、159丁目のブロンクス区裁判所 : The Bronx County Courthouseも一見地味に見えますが、アールデコ建築として存在感を出しています。
通りの広さに負けない位、この建物も巨大。外装からも雰囲気を感じますが、きっと中に足を踏み入れると内装も素晴らしく、魅せられそうです。

3.その他の主だった建物

166丁目にある野球チームのオーナーでもあった億万長者ビジネスマンAndrew Freedmanが建てた、低く長い建物のAndrew Freedman Home(1125 Grand Concourse)や、マクレラン・ストリート(Mcclellan St.)と167丁目の間にあるにある アールデコスタイルのFish Building (1150 Grand Concourse)があります。

Fish Building の外装
Fish Buildingのロビー
Fish Buildingの外装

4.ジョイス・キルマー 公園(Joyce Kilmer Park)

ローレライ噴水.

有名なアメリカ人詩人の名に改名されたJoyce Kilmer公園:Joyce Kilmer Parkには、ローレライ噴水:Lorelai Fountainとも呼ばる大きな大理石の乙女の像があります。
この噴水は、詩「ローレライ」でよく知られている著名なドイツ人詩人ハインリヒ・ハイネ:Heinrich Heineに敬意を表して、1899年に建てられました。161丁目近くにあるこの美しい像は、ブロンクスが荒れていた1970年代、NYで最も破壊や暴力の影響を受けた像だそうです。過酷な時期を経たにも関わらず優雅に静かに佇み、「私、超頑張ってきたんだから~」と声が聴こえた気がしました。
グランド・コンコース建設に貢献したルイス・ハインツ像:Louis J. Heintz もありますが、ローレライが目立つので、隠れるようにひっそりと佇んでいるように感じます。また、この公園の南側に、少し広ろめのフランツ・シーゲル:Franz Sigel 公園も近くにあります。

5.ブロンクス美術館(Bronx Museum of the Arts)

ブロンクス美術館

芸術では、165丁目にある近代的建物のBronx Museum of the Artsが楽しめます。
この美術館は、1971年にブロンクス区裁判所の一階ホールやその他の場所でオープンしました。そして後に、市が元ユダヤ教の礼拝堂のシナゴーグを購入・改装し、1983年に現在地で再オープンしたそうです。
アフリカ系やラテン系
もしくはブロンクスに関わるアメリカ人アーティストの近代作品が中心。訪問当時の展示は、生き生きとした躍動感溢れる作品が展示されていました。小さいながらも見ごたえ充分で、しかも入場料無料です。

Photo : Ruth S.
Photo : Mary G.
Photo : Mary G.

6.ヤンキース・スタジアム(Yankee Stadium)

ヤンキース・スタジアム

この南ブロンクスで忘れてはいけないのは、有名な野球チーム「ヤンキース」のホームグランドのヤンキーススタジアムではないでしょうか。巨額の建設費を投じられて2009年4月に新たにオープンしたこのスタジアムは地区の経済を牽引しているような存在感。ここは、サッカーチーム New York City FC のホームでもあります。
メトロ・ノース鉄道ハドソン線Yankees-East 153rd駅や地下鉄4、BおよびD線の161st Street駅出てすぐですので便利。ただ、駅周りはガラが悪い感じだったので、特にナイト・ゲームの際は、試合終了後はすぐ駅に向かう方が賢明かと思います。

7.南ブロンクスの過去

このグランド・コンコース沿いは、1920-1930年代、ブロンクスで最も見事なアールデコ様式建築多いの居住地域で、富裕層が住んでいました。しかし、徐々に彼らは他地区へ移動し始めました。

From NY Post.com

次第に南ブロンクス全体は、多様な要因が絡み合い、1970年代から1980年代初頭には厳しい貧困、様々な凶悪犯罪の横行と経済崩壊に襲われました。悪循環の極み、最悪の時代となり、アメリカの犯罪の主都との汚名を受けるまでに落ちてしまいます。特に、1977年10月、ヤンキース・スタジアムでの野球の試合中、球場近くでの火災を見たスポーツジャーナリストの有名な表現「ブロンクスが燃えている;There it is, ladies and gentlemen, the Bronx is burning」は、強烈な印象を人々に植え付けたそうです。

8.まとめ

グランド・コンコース沿いにあった壁画
Photo : John K.

今、この大通りを行きかう人々はアフリカ系、ヒスパニック系の人が多く、華やかりし頃の面影は感じず。グラフィティがちらほらありますが、ゴミもそこまで多くなく比較的綺麗で、昼間の大通り沿いでの治安は悪い印象は感じませんでした。ただ、この地区をよく知らない場合は、夜は行かない方が良いと感じました。

グランド・コンコースは、酸いも甘いも経験した優雅で貫禄あるマダムのような存在感ある建物が主役の大通り。栄光と没落、光と影の濃い激動の歴史を持ちながらも、時代や人の移り変わりを大らかに見守り続けているようでした。

グランド・コンコース沿いにあった壁画
Photo : John K.

おしゃれなお店、美味しそうなカフェやレストランを期待はしない方がいいですが、野球観戦の前に散策はいかがでしょうか。ただし、明るい時間帯を強くお薦めします。

NYC地下鉄 4番線167丁駅
NYC地下鉄 4番線167丁駅のホーム

行き方
・グランド・コンコースへは、NYC地下鉄4番線の149st.-Grand Concourse, 161St--Yankee Stadium, 167 St.駅またはD線 149st.-Grand Concourse駅が便利です。
・ヤンキース・スタジアムへは、メトロ・ノース鉄道ハドソン線Yankees-East 153rd駅かNYC地下鉄4、BおよびD線の161st Street駅が最寄りです。

謝 意

I’m so grateful to David L. for showing me around various places, sharing his knowledge and spending time with me, and to Mary G. and John K. for allowing me to use their photos.

参 照
Grand Concourse (Bronx) – Wikipedia

Why The Bronx Really Burned | FiveThirtyEight
Why the Bronx burned (nypost.com)

・Von Pressentin Wright, Carol. Blue Guide New York. Blue Guides, 2016.

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