行った気になる歴史と散策ブルックリン：ウイリアムズバーグ、ウォーターフロント

１．ドミノ・パーク（Domino Park）

ウイリアムズバーグのイースト・リバー沿いに製糖所名の名が付いたドミノ・パーク（Domino Park）があります。
ここからは、すぐ傍にあるウイリアムズバーグ橋と対岸のマンハッタンの素晴らしい景観を楽しめ、誰もがゆったりと散策できる場所です。

しかし、今、穏やかな時間が流れるこの場所の19世紀には、全く違った活気と風景がありました。
ヨーロッパ、主にドイツからの起業家たちが始めた事業、今ではその名が世界に知れ渡るほどに発展した、製糖所のドミノ・シュガー（Domino Sugar）と製薬会社のファイザー（Pfizer）の工場があり、それら工場で働く移民やその家族が多く住んでいました。

２．ドミノ・シュガー（Domino Sugar）

ドミノ・シュガーは、ドイツからの移民であった創業家ハブマイヤー（Havemeyer）が1807年に製糖所を創業。創業家の一人William F. Havemeyer は、1850年代中期にNYCの市長を3期務めました。
最盛期にはヨーロッパや中南米等からの移民を含めた4,500人もの従業員、アメリカ国内で消費される砂糖のほとんどがウイリアムズバーグで作られました。政府介入があるまでほぼ独占企業。世界に類を見ない砂糖帝国を築き、ハブマイヤーの名は砂糖の同意語とまで言われ、地下鉄Marcy駅近くに創業家の名のついたHavemeyer Streetもあります。当時のブルックリンの産業は、砂糖精製業にかかる相乗効果で、栄華を誇っていたそうです。

３．ファイザー（Pfizer）

一方のファイザー（Pfizer）、こちらも創立者はドイツ出身。ドミノ製糖所創業から約40年後、ファイザー家のいとこ同士が1849年に起業し、1880年代頃から成長が続き今では世界規模の企業。ブルックリンの工場は、2009年に閉められましたが、現在、本社はマンハッタンにあります。

ドミノ公園から数ブロック北に位置するグランドフェリー公園（Grand Ferry Park）には、赤いレンガの煙突があります。これは、ファイザーが20世紀初頭使っていた、糖蜜（Molasses）工場の一部であり、のちにペニシリンの大規模生産につながった場所です。あまり大きくない煙突（写真では大きく見えます）がぽつんと立っていますが、これも当時の情景を想像させてくれます。

４．ピーター・ルーガー (Peter Luger Steak House)

また、この地区には、同じくドイツ系移民が始めた有名なステーキハウス、ピーター・ルーガー https://peterluger.com があります。ここは、1887年、Carl Luger’s Café, Billiards, and Bowling Alleyとしてビリヤードやボーリングの出来る場所として開業。当時ドイツ系移民の多かったウイリアムズバーグで人気だったそうです。
近隣にある工場で厳しい環境で働く労働者達にとって、憩いの場であったか、高嶺の花だったかはわかりませんが、このレストランはウイリアムズバーグでの産業の繁栄と衰退そして再開発と、歴史を見てきたのは確かだと思います。

５．WilliamsburghとWilliamsburg

かつて、ウイリアムズバーグのスペルは、Williamsburghでしたが、諸事情で1850年代中頃に「H」が無くなりWilliamsburgへと変わりました。
もし、建物や看板で「Williamsburgh」となっていたら、それは1850年代中頃以前に作られたものです

6.　むすび

19世紀のウイリアムズバーグには、世界各国から届くサトウキビを乗せた大きな船が横付けされ、グランド・フェリー公園には、かつて人々や農作物をマンハッタンまで輸送するフェリーもありました。
近隣には、イースト・リバー沿いにネイビー・ヤード（Navy Yard）に造船所がありました。砂糖精製所跡やファイザーの煙突が新しい建物に囲まれて佇む姿は、過去と今をつないでいるよう。
新世界でのさらなる成功を夢見た起業家達、世界中から集まり力強く生きた職人や労働者達、産業が生まれ繫栄した頃のエネルギーを想像してみるのも楽しいかもしれません。