ブロードウェイ劇場区や劇場の発展に、深く関り貢献した多くの人々がいました。ほんの数名ですが、今回は彼らの紹介と関わった劇場のいくつかを紹介します。
1.シューベルト兄弟(Shubert Brothers)
シューベルト家のリー、サム、ジェイコブ (Lee, Sam, Jacob) 3兄弟は、現在のリトアニアからヨーロッパ経由で1881年アメリカに到着後、家族はNY州北部にあるシラキュース (Syracuse)に落ち着きます。アルコール依存症の父に代わって、学校へ行かず、小さい頃から長兄リーと次男サムは靴磨きやシラキュースの劇場の外で新聞売りをしていたそうです。
当時、サムに気づいたべラスコは劇中の小さい役を振り当てます。次第にサムは演劇界に魅せられていき、劇場運営にリーとジェイコブと共に関わり始めます。
1900年、兄弟は最初の劇場の所有権を取得し、シューベルト運営会社(The Shubert Organizaion)を設立。そして、それまであった劇場管理業界の独占が崩壊します。しかし残念なことに、1905年、志半ば 26歳の若さでサムは列車事故で他界してしまいますが、のちに運営会社は20世紀最大の劇場帝国を築きます。
余談ですが、チケット購入時に利用するテレチャージは、シューベルト運営の傘下です。
2.チャニン兄弟(Chanin Brothers)
ポーランドとウクライナからの移民の両親を持つアーウィン・チャニン(Irwin Chanin)は、建築家兼不動産開発者で、アールデコ調のタワーやブロードウェイ劇場の設計で最もよく知られています。兄弟のヘンリー・チャニンと建設会社を設立し、1925年の最初の劇場を皮切りに、計6つのブロードウェイ劇場を建設します。不動産王となった兄弟は、1920年代ブロードウェイ発展にかかせない存在だったそうです。
3.ハーバート・クラップ(Herbert J. Krapp)
ハーバート・クラップ(Herbert J. Krapp)は、20世紀初頭に活躍した劇場建築家。ブロードウェイの先駆者的な建築事務所の見習いからキャリアを始め、後に、シューベルト兄弟と活動し始め、彼らの重要な建築家となります。大恐慌時、劇場建設ブームが終わった後も、クラップは1960年代初期までシューベルト兄弟と活動を続けていたそうです。
また、チャニン兄弟の主要建築家でもあったクラップは、ブロードウェイにある劇場のほぼ半分を設計したと言われています。
書くことはないかと思いますが、苗字のスペルをCrapと間違えないようにしてください。
4.ブロードハースト劇場(Broadhurst Theatre)
ブロードハースト劇場は、劇作家でありプロデューサーのジョージ・ブロードハースト(George H. Broadhurst)とシューベルト兄弟とで建設、クラップが設計した最初の劇場です。
ここは、シューベルト運営会社の中で、常に最も予約が絶えない劇場の 1 つだそうです。
内装は、古代 ギリシア建築 様式のひとつのドーリア式。
ほぼ同時に建設された隣(裏?)に、外見が双子のようなショーンフェルド劇場があります。
・235 West 44th Street(ブロードウェイと8番街の間)
・1917年創立、1218席 (Shubert Official Site)
・劇場建物の正面、オーディトリウムのインテリアはNY市ランドマーク
・シューベルト・オーガニゼーションが運営
5.シューベルト劇場(Shubert Theatre)
シューベルト劇場は、シューベルト兄弟による建設で、劇場名は、若くして他界した兄弟の一人、サムを偲んで付けられたそうです。
様式は、イタリアン・ルネッサンス。 正面玄関は、レンガとテラコッタで出来ており、外装は、スグラッフィート(sgraffito)と呼ばれるフレスコ画と同じ手順の技法が使われているのが特徴です。
44丁目と45丁目の間にあるシューベルト・アレイ(Shubert Alley)に沿って並んでいるブース劇場にもスグラッフィートがあります。
・225 West 44th Street (ブロードウェイと8番街の間)
・1913年創立、1502席 (Shubert Official Site)
・劇場建物の正面とインテリアはNY市ランドマーク
・劇場で最も長い間上演された演目は、コーラス・ライン(A Chorus Line)
・シューベルト・オーガニゼーションが運営
6.ブース劇場(Booth Theatre)
ブース劇場は、建築家クラップの師匠ヘンリー・ボーモント・ハーツ(Henry Beaumont Herts)による設計で、シューベルト兄弟とプロデューサーのウィンスロップ・エイムズ(Winthrop Ames)が建設しました。
劇場名は、アメリカ人俳優、エドウイン・ブース(Edwin Booth)の名からです。
シューベルト劇場と同じくイタリアン・ルネッサンス様式で、正面はレンガとテラコッタ、モルタル外壁スタッコ(stucco)。そしてスグラッフィートで装飾されています。シューベルト劇場と一体として建設され、外観もよく似ており、建物に性別があるのなら、スグラッフィートの優しい印象があり、姉妹かなと。大きいシューベルトがお姉さんでしょうか。
・222 West 45th Street (ブロードウェイと8番街の間)
・1913年創立、 800席 (Shubert Official Site)
・建物正面、ロビーとオーディトリウムはNYCのランドマーク
・シューベルト・オーガニゼーションが運営
7.シューベルト運営会社(Shubert Organization)の劇場
シューベルト運営会社の劇場は、サーモンピンク色です。
44丁目から46丁目、特に44丁目と45丁目はほぼ全てシューベルトの傘下。まさしくシューベルト兄弟の帝国のよう。
44丁目と45丁目を繋ぐシューベルト・アレイは、他に理由があると思いますが、隣にあるミンスコフ劇場(Minskoff theatre)と境界のためかもしれないかも、と勝手に思っています。
謝 意
I’m so grateful to Kevin K. for showing me around and sharing his knowledge.