
ニューヨークのブロンクスに、かつて「ブロンクスのシャンゼリゼ通り」や「夢の大通り(The Boulevard of Dreams)」と呼ばれた大通りがあるのをご存じでしょうか。ブロンクスを南北に走り、歴史ある美しい建築が数多く残るこの大通りが、グランド・コンコース(Grand Concourse)です。
1920〜30年代には優雅なアールデコ建築が立ち並び、華やかな住宅街として知られたこのエリア。しかし、後に厳しい経済的な衰退も。今も残る建物や街並みを歩くと、ニューヨークの繁栄と変化の歴史が見える気がします。
今回は、グランド・コンコース周辺の歴史的建築や公園、美術館などを実際に巡り、その時の気づきなども交えながら、魅力をお伝えできればと思います。


1. グランド・コンコースとは

この大通りは、138から 206丁目付近まで約 8.4キロ(5.2マイル)の長さがあります。
フランスからの移民ルイス・アロイス・リッセ( Louis Aloys Risse)がデザインし、1894年から約15年の歳月と莫大な費用をかけて作られた、華やかな大通りだったそうです。今もアールデコ調の建物も多く残っており、特にこの長い通りの南側、153丁目から167丁目までは道幅は55メートル程あり、グランド・コンコース歴史地区に指定され守られています。また、ブロンクス郡裁判所やブロンクス中央分館・米国郵便局は国家歴史登録財でもあります。
1.主な見どころの建物
・元コンコース・プラザ・ホテル(Former the Concourse Plaza Hotel)
この大通り沿いの傑出した建物の一つが、161丁目にある元コンコース・プラザ・ホテル(The Concourse Plaza Hotel)。かつてヤンキースのベイ・ブルースなど人気スポーツ選手や野心向上心満々の政治家など数々の有名人を魅了し、社交の場であったホテル。しかし、1970年代頃から衰退し、1983年に高齢者向補助住宅、そして現在は低中所得者の住居となっているそうです。びっくりするほどの変わりように驚きです。

・ブロンクス郡裁判所(Bronx County Courthouse)

159丁目のブロンクス区裁判所 : The Bronx County Courthouseも一見地味に見えますが、アールデコ建築として存在感を出しています。
通りの広さに負けない位、この建物も巨大。外装からも雰囲気を感じますが、きっと中に足を踏み入れると内装も素晴らしく、魅せられそうです。

・フィッシュ・ビル(Fish Building )
アールデコ様式がひと際目を引くのFish Building はマクレラン・ストリート(Mcclellan St.)と167丁目の間にあります。建物入り口両横にはのびやかに泳ぐ魚たちがタイルで美しく描かれています。 また、建物ロビーの床も見事です。




・アンドリュー・フリードマン・ホーム(Andrew Freedman Home)
野球チームのオーナーでもあった億万長者ビジネスマンであったアンドリュー・フリーマンが建設したアンドリュー・フリーマン・ホームはグランドコンコース沿い166丁目(1125 Grand Concourse)にあります。この低く横に長い建物は、かつて裕福だったが老後に貧困に陥ってしまった人達(Poorhouse for ex-Rich)向けの老人ホームだったそう。現在は、アート・ギャラリーやコミュニティ支援施設として利用されています。訪問時、ゲートは閉まっていたので、中は見れませんでした。


1.公園・美術館・スタジアム
・ジョイス・キルマー 公園(Joyce Kilmer Park)

有名なアメリカ人詩人の名に改名されたJoyce Kilmer公園:Joyce Kilmer Parkには、ローレライ噴水:Lorelai Fountainとも呼ばる大きな大理石の乙女の像があります。
この噴水は、詩「ローレライ」でよく知られている著名なドイツ人詩人ハインリヒ・ハイネ:Heinrich Heineに敬意を表して、1899年に建てられました。161丁目近くにあるこの美しい像は、ブロンクスが荒れていた1970年代、NYで最も破壊や暴力の影響を受けた像だそうです。過酷な時期を経たにも関わらず優雅に静かに佇み、「私、超頑張ってきたんだから~」と声が聴こえた気がしました。
グランド・コンコース建設に貢献したルイス・ハインツ像:Louis J. Heintz もありますが、ローレライが目立つので、隠れるようにひっそりと佇んでいるように感じます。また、この公園の南側に、少し広ろめのフランツ・シーゲル:Franz Sigel 公園も近くにあります。
・ブロンクス美術館(Bronx Museum of the Arts)

芸術では、165丁目にある近代的建物のBronx Museum of the Artsが楽しめます。
この美術館は、1971年にブロンクス区裁判所の一階ホールやその他の場所でオープンしました。そして後に、市が元ユダヤ教の礼拝堂のシナゴーグを購入・改装し、1983年に現在地で再オープンしたそうです。
アフリカ系やラテン系、もしくはブロンクスに関わるアメリカ人アーティストの近代作品が中心。訪問当時の展示は、生き生きとした躍動感溢れる作品が展示されていました。小さいながらも見ごたえ充分で、しかも入場料無料です。



・ヤンキース・スタジアム(Yankee Stadium)

この南ブロンクスで忘れてはいけないのは、有名な野球チーム「ヤンキース」のホームグランドのヤンキーススタジアムではないでしょうか。巨額の建設費を投じられて2009年4月に新たにオープンしたこのスタジアムは地区の経済を牽引しているような存在感。ここは、サッカーチーム New York City FC のホームでもあります。
メトロ・ノース鉄道ハドソン線Yankees-East 153rd駅や地下鉄4、BおよびD線の161st Street駅出てすぐですので便利。ただ、駅周りは治安のよい印象を受けましたので、ナイト・ゲームの際は、試合終了後はすぐ駅に向かう方が賢明かと思います。


7.南ブロンクスの栄光と衰退
このグランド・コンコース沿いは、1920-1930年代、ブロンクスで最も見事なアールデコ様式建築多いの居住地域で、富裕層が住んでいました。しかし、徐々に彼らは他地区へ移動し始めました。

次第に南ブロンクス全体は、多様な要因が絡み合い、1970年代から1980年代初頭には厳しい貧困、様々な凶悪犯罪の横行と経済崩壊に襲われました。悪循環の極み、最悪の時代となり、アメリカの犯罪の主都との汚名を受けるまでに落ちてしまいます。特に、1977年10月、ヤンキース・スタジアムでの野球の試合中、球場近くでの火災を見たスポーツジャーナリストの有名な表現「ブロンクスが燃えている;There it is, ladies and gentlemen, the Bronx is burning」は、強烈な印象を人々に植え付けたそうです。
8.訪問時の情報

Photo ; John K.
グランド・コンコースはとても長い通りですが、通りの南端へは、ヤンキースタジアムから数ブロックですし、その間に公園もあります。残念ながらおしゃれなお店、美味しそうなカフェやレストランは見当たりませんでしたが、昼間の野球観戦の前に少し足を延ばして散策はいかがでしょうか。ただし、明るい時間帯を強くお薦めします。
8.あとがき
グランド・コンコース近辺を昼間に訪問した時に見かけた人々はアフリカ系、ヒスパニック系の人が多かったです。建物以外は華やかりし頃の面影はあまり感じませんでしたが、通りはゴミもそこまで落ちてなく比較的綺麗。寛げる公園もあり、治安は悪い印象は感じませんでした。ただ、昼間の訪問だったので、この地区をよく知らない場合は、夜間は避けた方が良いと感じました。
酸いも甘いも経験した優雅で貫禄あるマダムのような存在感ある建物が主役の大通り。栄光と没落、光と影が濃く、激動の歴史を持ちながらも、時代や人の移り変わりを大らかに見守り続けているようでした。




行き方
・グランド・コンコースへは、NYC地下鉄4番線の149st.-Grand Concourse, 161St--Yankee Stadium, 167 St.駅またはD線 149st.-Grand Concourse駅が便利です。
・ヤンキース・スタジアムへは、メトロ・ノース鉄道ハドソン線Yankees-East 153rd駅かNYC地下鉄4、BおよびD線の161st Street駅が最寄りです。

Acknowledgements
I’m so grateful to David L. for showing me around various places, sharing his knowledge and spending time with me, and to Maria F. , Ruth S., Mary G. and John K. for allowing me to use their photos.

参 照
・Von Pressentin Wright, Carol. Blue Guide New York. Blue Guides, 2016.
・Why The Bronx Really Burned | FiveThirtyEight
・Why the Bronx burned (nypost.com)
・Grand Concourse (Bronx) – Wikipedia




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